「困った時はお互い様」という言葉があるが、善意を食い物にする人間も存在する。長年の付き合いがある友人だからと信じた結果、悪夢に見舞われた体験談を紹介したい。

都内在住の会社員、安藤弘明さん(仮名・32歳)は、数年前に地元の親友だった人物にひどい裏切られ方をした。

「1週間だけ…」親友に貸した車が2ヶ月返ってこない…嘘を暴い...の画像はこちら >>

貸した車が返ってこない

「ある日、何年か連絡をとっていなかった畑中(仮名)から突然電話が来たんです。『ばあちゃんの足が悪くなって通院に必要だから、1週間だけ車を貸してほしい』とのことでした。畑中のおばあちゃんとは顔見知りでしたし、地元の交通の不便さは僕もよく知っています。役に立てるならと、快諾してキーを預けることにしたんです」

だが、約束の1週間を過ぎても、畑中さんから車が戻ってくることはなかった。

「電話をしても無視、LINEも未読のまま。畑中の実家にも電話したんですが、電話に出た母親に説明しても『私は関係ない。本人に言ってくれ』と冷たくあしらわれ、畑中は一人暮らしをしていましたが家の場所も教えてくれず。連絡手段を失いどうしようもないと絶望しました」

安藤さんは共通の友人に、地元の状況を調べてもらうことにした。

「友人の祖父母のネットワークを通じて調べてもらったところ、畑中のおばあちゃんは、毎日、元気に畑仕事をしていて、ゲートボールの集まりにも欠かさず参加しているとのことでした。つまり、通院のために車を使うというのは真っ赤な嘘だったんです」

「民事不介入の壁」をどう越えるか

共通の友人から連絡してもらってもつながらず、2カ月経っても音沙汰はなかった。警察に相談しようかとも考えたが、法的な壁が立ちはだかる。

「調べたところ、知人同士の貸し借りの場合は民事不介入のため、すぐには動けないそうでした……。趣味の釣りにも、彼女とのドライブにも行けなくなって、ストレスがすごかったです。
『車が返ってこない』と彼女に説明する度に屈辱的な気分になるのも本当に嫌でした……」

耐えかねた安藤さんは、地元の友人たちを頼ることにした。

「迷惑がかかるのは嫌だと思い控えてきたんですが、もう頼るしかないと思い、友人たちを集めて相談することにしました。勤務先の人間関係のせいなのか、畑中は働きだしてからたびたび友人達に不義理を働いているようで、みんな共感してくれました」

友人達はチャットグループを作り、情報を集めてくれた。

「ある日、実家が飲食店をやっている友人から『畑中がうちの店に来た!』とメッセージが入ったんです。ただ、友人は他で働いていて動くことはできませんでした。すると、近くにいた別の友人が即座に現場へ急行してくれたんです。タッチの差で畑中は店を出るところだったんですが、そのまま尾行してくれて……。ついに畑中が住んでいるアパートと、僕の車を止めている駐車場を特定したんです」

奪還劇の果てに待ち受けていたのは…

報告を受けた安藤さんは、当日の仕事が終わるとすぐに現場へ急行した。

「深夜の駐車場で僕の車を見つけたときは、手が震えました。持参したスペアキーで鍵を開けると、中にはハンバーガーの包装紙や食べかす、何でできたかわからないシミ、飲みかけのペットボトルが散乱しているひどい状態でした。そのまま回収して、翌朝一番にディーラーへ持ち込んで、スマートキー含めて鍵を全部交換してもらいました。二度とあいつが触れないようにしてやったんです」

愛車を取り戻した安藤さんは畑中さんに連絡を入れた。


「回収した車の中には、畑中の仕事道具と思われる高そうな工具一式が残されていました。それで『工具を返してほしければ、謝罪はもちろん、鍵の交換費用と清掃代を全額支払え』と突きつけたんです」

金額を決める際には葛藤もあったという。

「畑中のやったことは許せませんでしたが、だからと言って過剰に金をふっかけるのは嫌でした。なので真っ当な値段だったと思います。それでも鍵の交換代がかなりしたので、あいつは最初見苦しい言い訳をしていました。ですが、仕事道具を人質に取られ、逃げられないと悟ったんでしょうね。結局、渋々ながらも全額支払うことに応じました」

お金は回収したが、壊れた信頼は戻らなかった。悪評は地元中に広まり、もう誰も畑中さんを相手にしなくなった。以降、畑中さんが地元に帰ってきたという話も聞かなくなった。善意を裏切る代償は、本人が思っているより高くついたのかもしれない。

<TEXT/和泉太郎>

【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め
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