現在各地で進む再開発は、街全体を活性化し、より良い方向へ成長させるものと思われている。
 しかし、地元住民からはその街が持つ固有の良さや雰囲気を壊すとして、反対の声が上がることも多い。


 さらに、近隣におけるタワーマンション建設が進んだことで、生活に支障をきたすようになったなどの“タワマントラブル”も少なくない。

 今回は、一軒家が立ち並ぶ閑静な住宅街に住んでいたアヤカさん(仮名・36歳・女性)が、自宅のほど近くに建設されたタワマンによって、思わぬ被害に巻き込まれた話を明かしてくれた。

マイホーム近くに「タワマンができた」家族の悲鳴。「上階住民か...の画像はこちら >>

突然現れた“再開発予定地”の看板

 いまからおよそ8年前、当時新婚だったアヤカさんは、神奈川県の某市に憧れだった一軒家のマイホームを構えた。

「そこは駅近ながら一軒家が多く立ち並ぶ、のどかな雰囲気の住宅地でした。周りには子育て世帯が多く、子どもから大人まで世代関係なく過ごせるスポットがたくさんあって、土地の下見に行ったときに、“ここに住むしかない!”と強く思いました。ちょうどその頃は妊活に励んでいたこともあり、子育てしやすい環境というのも魅力でした。

 そして私が最も気に入ったのは、売り出されていたその土地の日当たりの良さ。実際、建築した自宅のリビングは南向きなのですが、朝には部屋に柔らかい日差しが差し込み、穏やかな空間がとても気に入っていましたね」

 夢だったマイホームが完成し、最高の環境で日々の生活を満喫していたアヤカさん。だが住み始めてから1年ほどが経過したある日、穏やかな暮らしに突如不穏な影が忍び寄る。

「その自宅近くのエリアは、私たち夫婦が住み始めたときはかなり広い空き地だったんです。突然そこに“再開発予定地”と書かれた看板が現れ、最初は商業施設や大型スーパーができるのかと思っていました。しかし、後日掲載された計画図を見てみると、35階建てのタワマンが建設予定と書かれていて、一気に青ざめました」

タワマンから自宅の庭が丸見えに

 それまで周囲に高いビルやタワマンがひとつもなかったということもあり、近所ではすぐに再開発の話題で持ちきりになったんだとか。

「近所の方々の多くが『この辺りには高い建物がないから良かったのに』と不満を漏らしていましたね。みなさん戸惑っている様子でした」

 タワマン建設の看板が立ってから約1年後、工事が本格的に始まったという。


「工事はどんどん進んで、タワマンは想像以上の高さになっていき、これまで自宅から広々と見えていた空が少しずつ遮られていくのが悲しかったですね。あとは建設期間中に、いちばん悩まされたのが、工事の騒音です。

 建設真っただ中の当時は子どもが産まれたばかりで、育休を取っていたのですが、昼間は大きな音が鳴り響くので、せっかく寝かしつけてもすぐに子どもが起きて泣き出してしまうことが毎日のように続いて……。若干ノイローゼ状態になり、本当に大変でした」

 数年後、巨大なタワマンが完成。その後の生活についてアヤカさんはこう語る。

「タワマンが完成した後の生活も最悪でした。南の方角にタワマンが建ったので、自宅にはあまり日差しが入らなくなってしまったんです。

 それから我が家にはけっこう広めの庭もあるのですが、ふと上を見るとタワマンの住居の窓が見え、タワマン住民から自分の家が丸見え状態になっているのではないかと、視線が気になるようになって。

 庭で子どもと遊ぶのも躊躇するようになったり、洗濯物も下着なんかは外で干せなくなったり、自宅を購入した当初は庭で園芸なんかもやろうと考えていたのですが泣く泣く諦めました」

 アヤカさんが気に入っていた日当たりの良さやこだわりの庭は、タワマンによって台無しに。カーテンを閉めっぱなしにすることが多くなり、鬱々とした日々を過ごすはめになったという。

「夫も『せっかく何千万出して家を購入した結果がこれか…』と嘆いています。今は家を売却するかどうか、正直迷っているところなんです」

タワマン民との軋轢、駅の混雑も…

 そしてアヤカさんは、タワマン民の印象について「冷たい人が多い」と語る。


「こちらが会釈したり挨拶したりしても、基本無視する人が多いですよ。

 つい最近、タワマンから出てきた主婦のような方と道幅が狭い歩道ですれ違ったことがありました。

 向こうは我先にと言わんばかりに道の真ん中を譲らなかったので、すれ違う際に私は横へよけたのですが、肩を思いっきりぶつけられたんです。タワマンの人たちは余裕がない人や忙しそうにしている人が多く、あまりいい印象はありませんね」

 さらに朝の通勤時には、最寄り駅の混雑具合が一層ひどくなったという。

 もともと住んでいた人たちの間では「最近、駅の混み具合すごいよね」「人が一気に増えた気がする」といったやり取りがよくあったそうだ。

 ――憧れのマイホームで、穏やかな暮らしを送れると胸膨らませていたアヤカさん。

 その“憧れ”がたった数年で崩れ去ってしまったというこの経験は、再開発が活発化する昨今においては決して珍しいことではないのかもしれない。

(取材・文=瑠璃光丸凪/A4studio)

【瑠璃光丸凪】
編集プロダクションA4studio(エーヨンスタジオ)所属のライター。興味のあるジャンルは、アングラ・音楽・ファッションなどサブカルチャー全般と、ジェンダー問題、政治経済問題について。趣味はレコード集め。
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