歯磨きの後、その歯ブラシはどうしていますか? 洗ってそのままコップに立てる。キャップをつける。
家族の歯ブラシと並べる……。ほとんどの人が当たり前にやっていることですが、実はその保管方法、歯ブラシを細菌やカビが発生しやすい環境にしている可能性があります。特に梅雨の時期は要注意です。
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湿度が高くなることで、歯ブラシの毛先は乾きにくくなり、細菌にとって快適な環境ができあがります。

「毎日歯磨きしているから大丈夫」

そう思っていても、使っている歯ブラシ自体が不衛生な状態になっていては本末転倒です。あなたの口臭、実はその「濡れた歯ブラシ」が原因かもしれません。今回は、意外と知られていない歯ブラシの保管方法の落とし穴について、歯科医の視点から解説します。

梅雨の洗面所は細菌にとって天国

歯科医が警告する「濡れた歯ブラシ」の意外なリスク。梅雨の洗面所は要注意
※写真はイメージです(以下同)
梅雨の時期は、高温多湿です。洗面所の鏡が曇る。タオルがなんとなく湿っている。洗濯物の生乾き臭が気になる。

そんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。

実は、その環境は、細菌やカビにとって非常に過ごしやすい環境なのです。
歯ブラシは毎日、水と唾液にさらされます。使用後に十分乾燥できなければ、毛先や毛の根元に水分が残った状態になります。特に歯ブラシの毛は密集しているため、一見乾いているように見えても、内側には湿気が残っていることがあります。これは、生乾きの洗濯物とよく似ています。表面は乾いているように見えても、内部には水分が残り、雑菌が繁殖しやすい状態になっているのです。

さらに梅雨の時期は窓を開ける機会も減り、洗面所の換気が不十分になりがちです。その結果、歯ブラシはなかなか乾燥せず、細菌にとって快適な環境が長時間続いてしまうのです。

実はやっている人が多いNG保管法

NG① キャップをつけっぱなし

製品によっては歯磨きキャップが付いているものもあります。しかし、キャップが付いていると通気性が悪くなり、乾燥がしにくくなるため、キャップ内で細菌が繁殖してしまいます。基本的にキャップは、外出の際の持ち運び時のみ使用し、帰宅したら外して風通しの良い場所で保管しましょう。

NG② 濡れたまま引き出しへ

洗面所の棚の中や引き出しの中に、歯ブラシを収納している人は要注意です。空気の流れが悪く乾燥しづらい環境下では、歯ブラシも生乾きとなり、細菌が繁殖しやすくなります。歯ブラシの毛が乾くまでは、棚や引き出しから出しておきましょう。


NG③ 家族の歯ブラシが接触

家族の歯ブラシをまとめて置いていないでしょうか。歯ブラシの頭が密着した状態では、歯ブラシに付着している細菌が移ってしまいます。また、隣の歯ブラシに触れている部分は乾きづらく、さらに細菌が繁殖してしまいます。

NG④ 歯ブラシの頭を下にしてコップに入れている

歯ブラシの頭を下にしてコップに入れると、毛先がぬれたままになり、細菌が繁殖しやすくなります。歯ブラシの頭は上に向けて保管しましょう。

NG⑤ 歯ブラシの頭を引っかけるタイプの歯磨きホルダーを使用している

歯ブラシの頭を引っかけるタイプの歯磨きホルダーは一見、風通しが良くて乾燥しやすいイメージがあります。しかし、歯ブラシの頭とホルダーが触れている部分では接触部分に水分が残りやすく、汚れがたまりやすくなることがあります。使用する際は、風通しの良い場所や換気が良い場所に設置をしてください。
                                         
NG⑥ 何カ月も交換しない

歯ブラシは、大体1カ月くらいが交換の目安です。しかし、必ずしも1カ月というわけではありません。歯磨き時の圧が強い人では、もっと早く交換時期になることがあります。目安は、歯ブラシを後ろから見た時に、毛先が開いて見えていたら交換です。


歯磨き粉選びに悩む人は多いですが、実は歯磨き粉以上に重要なのが「歯ブラシそのものの状態」です。どんな高価な歯磨き粉も、毛先が開いた歯ブラシでは十分な力を発揮できません。実際、患者さんに普段使っている歯ブラシを持参してもらうと、毛先が大きく広がり、まるで花が咲いたような状態になっていることがあります。本人は毎日しっかり磨いているつもりでも、毛先が歯の表面や歯と歯ぐきの境目にうまく当たらず、磨き残しが増えてしまうのです。また、開いた毛先が歯茎に当たって歯茎を傷つける原因にもなります。

NG⑦トイレのすぐ近くに置いている

洗面所とトイレが同じ空間になっている家庭も多いでしょう。トイレを流した際には、目に見えないほど細かな水滴(エアロゾル)が周囲に飛散することが知られています。そのため、歯ブラシをトイレのすぐ近くに保管している場合、飛散した微粒子が付着する可能性も否定できません。

神経質になる必要はありませんが、できればトイレから少し離れた場所で保管し、風通しを確保することをおすすめします。

歯ブラシが汚れると何が起きる?

歯ブラシが汚れたからといって、それだけでむし歯や歯周病になるわけではありません。しかし問題は、歯ブラシに細菌やカビが増殖した状態で毎日使用し続けることです。口の中にはもともと多くの細菌が存在していますが、不衛生な歯ブラシを使うことで細菌が毛先に残り続け、本来の清掃効果が発揮されない可能性があります。

また、毛先が開いた歯ブラシでは汚れを十分に落とすことができません。
その結果、歯垢(プラーク)が残りやすくなり、虫歯や歯肉炎、口臭の原因になることがあります。特に歯周病は初期症状が少なく、自覚がないまま進行することも珍しくありません。

歯ブラシは「口をきれいにする道具」です。その道具自体が不衛生になっていては、本来の役割を果たせなくなってしまうのです。

歯科医がすすめる正しい保管方法

歯科医が警告する「濡れた歯ブラシ」の意外なリスク。梅雨の洗面所は要注意
洗面所
歯科医がすすめる「歯ブラシを細菌だらけにしない」5つの習慣を紹介します。

①使用後は流水でしっかり洗う

歯磨き後の歯ブラシには、歯垢(プラーク)や唾液、食べかすが付着しています。軽くすすぐだけではなく、毛先の根元まで流水で十分に洗い流しましょう。

②しっかり水を切る

洗った後は数回振るだけでなく、指で軽く押さえて余分な水分を取り除くなど軽く水気を落とし、できるだけ乾燥しやすい状態にします。清潔なティッシュペーパーやタオルで軽く水気を吸い取るのも効果的です。歯ブラシに残った水分は細菌が繁殖しやすい環境をつくるため、水気はなるべく除去して乾燥させましょう。

③風通しの良い場所で乾燥させる

収納棚や引き出しの中ではなく、空気が流れる場所で保管しましょう。特に梅雨の時期は「乾かすこと」が最大のポイントです。

④家族の歯ブラシと接触させない

歯ブラシ同士が触れていると細菌が移るだけでなく、接触部分が乾きにくくなります。
スタンドなどを利用し、1本ずつ離して保管しましょう。

⑤毛先が開いたら交換する

交換の目安は約1か月ですが、期間よりも毛先の状態が重要です。後ろから見て毛先が広がって見える場合は交換のサイン。毛先が開いた歯ブラシは清掃効率が大きく低下します。

歯ブラシは“口に入れる”掃除道具だからこそ…

歯科医が警告する「濡れた歯ブラシ」の意外なリスク。梅雨の洗面所は要注意
歯磨きをする女性
「スマホケースは定期的に拭くのに、歯ブラシは何か月も交換していない」そんな人は意外と少なくありません。しかし歯ブラシは、毎日直接体の中へ入る衛生用品です。梅雨の時期こそ、自分の歯ブラシを見直してみてください。

毛先は開いていませんか?

しっかり乾燥できていますか?

その1本を替えるだけで、お口の環境は変わるかもしれません。

毎日使うものだからこそ、つい見落としてしまう歯ブラシの衛生管理。梅雨の時期は、保管方法や交換時期を見直す絶好のタイミングです。

高価な歯磨き粉を買う前に、まずは今晩、ご自身の歯ブラシの状態をチェックしてみてください。

<文/野尻真里>

【野尻真里】
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。
「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari
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