メイショウタバルが14着、アドマイヤテラが11着に終わった凱旋門賞の後、ファンからはそんな声も上がった。
たしかに、皮肉な巡り合わせだ。雨を見込んで渋った馬場への適性が注目されたメイショウタバルが出走した今年は、公式馬場が稍重だった。
しかし、勝ち時計2分27秒11が示す通り、極端な消耗戦になったわけではない。一方で、より軽い芝で見てみたかったドウデュースが挑んだ2022年は重馬場だった。
メイショウタバル14着…稍重でも生かしきれなかった持ち味
10月4日、フランスのパリロンシャン競馬場で行われた凱旋門賞は、地元ダリズが圧巻の内容で連覇を飾った。日本からは2頭が挑んだものの、アドマイヤテラが11着、武豊騎手とコンビを組んだメイショウタバルは14着。ともに最後の直線で失速し、上位争いに加われなかった。メイショウタバルがJRAのオッズで2番人気に支持されたのは、道悪の宝塚記念を連覇した実績もあったからだ。渋った芝でも簡単に脚色が鈍らないのが、この馬の強み。時計のかかる凱旋門賞なら、この馬の持ち味が生きるのではないか。そう考えたファンがいたのも無理はない。
ただし、今年は思ったほど馬場が悪化しなかった。渋った馬場を得意とする馬でも、その強みがはっきり出るのは、周囲まで苦しくなるような条件になってこそ。
自分のリズムでも…武豊が感じた想像以上の消耗
レース後、管理する石橋守調教師は、形としては悪くなかったものの、最後にもうひと脚を求められる展開がメイショウタバルには厳しかったという見方を示した。武豊騎手も、メイショウタバルらしいリズムで走れていたとしながら、直線へ向くまでに想像以上にスタミナとパワーを削がれていたと振り返った。そのメイショウタバルは主導権を握って自分の形に持ち込んだ。それでも、ロンシャンの2400mでは、最後にもうひと踏ん張りを求められる局面で余力が残っていなかったということだろう。馬場が極端に悪化しなかったことは一因かもしれないが、それだけで敗因のすべてを説明することもできない。
期待された適性と馬場がかみ合わない…
実は父ゴールドシップも、似たような巡り合わせを経験している。2014年、重い馬場への強さを期待されて凱旋門賞へ向かったが、当日は良馬場。結果は14着だった。2018年のクリンチャーも同じだ。不良馬場だった京都記念を勝ち、その適性の高さに期待が集まった。しかしその年の凱旋門賞は皮肉にも良馬場で行われ、17着に敗れた。期待された適性と当日の馬場がかみ合わない——。
反対に、2022年は今年よりも重い馬場でドウデュースが走ることになった。
日本の道悪実績だけでは測れない凱旋門賞適性
もっとも、馬場の巡り合わせがすべてだったわけではない。2022年はドウデュースに加え、タイトルホルダー、ステイフーリッシュ、ディープボンドも出走していた。後者3頭は馬場を苦にしないタイプと思われていたが、上位争いには加われなかった。その前年の2021年にも、日本で道悪実績を持っていたクロノジェネシスが、重馬場の凱旋門賞で7着に敗れている。日本の重馬場をこなせる馬が、欧州の重い芝でも同じように走れるとは限らない。その事実は、過去の挑戦が示している。
メイショウタバルにとっては、2400mという距離や起伏のあるコース、3か月半の休み明けも、敗因として考えられるだろう。
凱旋門賞の壁を越える「欧州向き」の日本馬とは
凱旋門賞で求められるのは馬場への適性だけではない。世界の頂点を争う絶対能力があり、遠征先で万全の状態をつくり、展開にも対応しなければならない。馬場が噛み合えば日本馬が勝てる、というほど単純なレースではないことは明らかだ。それでも、日本馬の挑戦には、どこか歯がゆい巡り合わせが続いてきたのも事実である。重い芝への適性を期待された馬が挑んだ年に良馬場となる一方、今年くらいの馬場で見てみたかったドウデュースは重馬場にぶつかった。
果たして「欧州向き」の日本馬とは、どんなタイプなのか。メイショウタバルの14着は、単純な道悪実績だけでは凱旋門賞の適性を測れないことを、あらためて示したと同時に、日本馬が目指すべき資質を、もう一度見直す必要も突きつけたのではないだろうか。
文/中川大河
【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。
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