近年、マッチングアプリの事業者は増加し続けています。東京商工リサーチによると、「婚活・恋活マッチングアプリ」の運営企業は2019年3月末時点で5社でしたが、22年度には20社を超え、26年3月末時点で35社となりました。
アプリで出会って結婚するアプリ婚も主流派となり、職場恋愛を超えました。
 一方で男性側は出会えないばかりか、女性側も理想の相手に巡り合えない人も多く、「アプリ疲れ」で離脱する人も増えています。理論上、“人気度”が低い人は何度も挑戦しなければなりません。マッチングアプリの特徴と日本の婚姻事情を解説していきます。

マッチングアプリの仕組み

「返信が来ない…」結婚の3割占めるマッチングアプリの裏で、理...の画像はこちら >>
 マッチングアプリは2010年代後半から認知度が高まり、出会いの場が激減したコロナ禍で利用者が増えました。近年普及したばかりなので、利用者の多くは若年層です。中高年以上の方や既婚の方はそもそも利用したことがない人が多いかと思います。

 マッチングアプリを仕様別に分類すると、ランダムで表示される相手を振り分ける「フリック式」と、ECのように検索条件で絞り込んだ相手が一覧で表示される「検索式」に分けられます。前者は主にTinderやタップル、後者はPairsやWithなどです。フリック式も相手を条件で絞り込むことができますが、一覧表示ではなく、一人ずつ表示される点で検索式と異なります。

 なお、いずれの方式においてもマッチングが成立する仕様は共通しています。気になる相手に「いいね」を送り、相手も自分に「いいね」を返してくれると、マッチングが成立します。成立後はLINEのようなチャットアプリと同様、2者間でメッセージのやり取りができるようになります。
相手を「ブロック」した場合、双方の画面から互いのプロフィールが表示されなくなります。

結婚の出会い別では1位

 以前は「出会い系アプリ」を思い起こさせるため、マイナスイメージが強かったマッチングアプリ。しかし現在では結婚に至る主な経路となっており、理解されるようになりました。明治安田生命の調査によると、21年まで結婚のきっかけに占めるアプリ婚の割合は17%程度でしたが、24年以降は約30%で推移しています。10組に3組はアプリ婚の時代になったのです。各2割ほどを占める「友人・知人の紹介」「職場恋愛」、1割強の「学校関係」を超え、主流派となりました。ちなみに25年の調査結果によると、結婚相談所やお見合い、趣味・習い事は5%に満たず、稀なパターンです。

 マッチングアプリは何より手軽に始められることから利用者が増えました。そもそも異性の知り合いが少なく、職場にも相手がいない人が相手を見つける場として機能しています。上手くいく場合は理想の条件に近い相手と交際でき、結婚につながっているようです。

アプリ疲れで離脱者も

「返信が来ない…」結婚の3割占めるマッチングアプリの裏で、理論上“誰とも交際できない”残酷な現実
※写真はイメージです。画像生成にAIを使用しています
 結婚への主な経路となったマッチングアプリですが、「アプリ疲れ」で離脱する人もいます。男性側は「デートまで行けない」「メッセージの返信が来ない」「そもそもマッチングしない」など、苦戦する意見が聞かれます。一方の女性側には「いいね」が殺到するものの、「理想の相手がいない」「自分より年収が高い男がいない」といった意見があります。アプリ婚がなぜ厳しいのか、解説していきましょう。


 簡略化のため、男女それぞれ3人しかいないアプリを想定します。参加者は男1、男2、男3、女1、女2、女3の計6人です。人間の魅力を数値化することは難しいですが、番号は人気度の順位を表しており、数字が小さいほどモテる人です。その上で、現実の男女間のストライクゾーンの差を考慮し、下記の2条件を想定します。

・男性側は全員、人気度が自分以上の相手を選ぶ。
・女性側は全員、人気度が自分より高い人を選ぶ。


 この条件において、男3は誰とも交際することができません。誰にも好かれていないからです。また、女1はモテるにもかかわらず、同様に誰とも交際することができません。最終的に(男1・女2)(男2・女3)が安定した組み合わせとなります。(男1・女3)は一時的にデートすることがあっても、男1は女2を選ぶため、安定的なパートナーとはならないでしょう。

 以上の組み合わせは経済学のマッチング理論をごく簡単に引用した例に過ぎませんが、「モテない人は交際に至らない」「理想の高い人は交際に至らない」ことを示しています。


独身男性には厳しい現実

 なお、現実のマッチングアプリは男女比が「7:3」~「6:4」と言われ、女性が優位です。男性月額制、女性無料のサービスが多いにもかかわらず、男性利用者が多いのが実情です。前述のマッチング理論では男女比を同数と想定しました。しかし現実では男性の方が多いため、多数の男が余ることになるのです。男側が「そもそもマッチングしない」のも、そうした背景があります。もちろん結婚、交際、独身は個人の自由で、いずれを選択した人に優劣があるわけではありません。しかし少なくとも、アプリ参加者の中において”強者”以外は苦しむことになります。

 厚生労働省によると、2010年代まで日本の婚姻件数は60万件前後で推移していました。しかしコロナ禍以降に激減し、25年は48万9119件になりました。人口1000人当たりの婚姻件数を示す婚姻率も低下しています。マッチングアプリは“強者同士”を結んでいるに過ぎず、全体的な婚姻率向上に貢献していないことを示しています。

<TEXT/山口伸>

【山口伸】
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。
企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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