’26年7月に障害者の法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられた一方、日商・東商の調査で、中小企業の約6割が未達成と判明した。従業員数50人以下の企業では、約半数が採用の取り組みすら行っていなかった。
要因として、教育に割く人的な余裕のなさなどが挙げられた。
障害者雇用は、法定雇用率という「人数」の達成だけを追えばいいのか。作家の乙武洋匡氏は、採用後の定着や本人と仕事のマッチングに目を向ける必要性を考える(以下は乙武氏による寄稿)。

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入り口の数字だけでなく、見るべきは離職率であり“数合わせ”採用の現実

今年7月、民間企業に義務づけられている障害者の法定雇用率が2.7%に引き上げられた。だが、日本商工会議所などの調査によると、対象となる中小企業の半数以上が基準を満たしていないという。しかし、これをもって「中小企業は努力が足りない」とは言えない。「障害特性に合わせて仕事を切り出す」「支援する人員を配置する」といった手法は、大企業ほど実現しやすい。利益にも人員にも余裕のない中小企業に、同じ体制を求めるのは酷でもある。

もちろん、法定雇用率を定めることが無意味だとは思わない。いまだ分離教育が維持され、障害者と接する経験が乏しい日本社会では、障害者と働くこと自体がイメージしづらい。基準を示し、相応の雇用を担保することには一定の意味がある。

ただし「入り口」の数字ばかり見ていても問題は解決しない。本来着目されるべきは定着率、裏返せば離職率だ。
「出口」への注目が、あまりに軽視されていると感じるのだ。

障害者職業総合センターの調査によると、就職から1年後の定着率は、身体障害者で60.8%、精神障害者では49.3%だった。一般の新卒者とは調査条件が異なるため単純比較はできないが、健常者が職場に定着する比率とは大きな隔たりがあることは一見して理解できる数字となっている。

“数合わせ採用”では定着しない

なぜ障害者は雇用されても長続きしにくいのか。それは、法定雇用率を満たすために本人と仕事のマッチングを後回しにして、とにかく“数字合わせ”のための採用が優先されてしまっているからだ。もちろん仕事とは生計を立てる手段なのだが、それと同時にやりがいや自己実現といった要素も重要になってくる。それらを感じられない職場に長く在籍することは、やはり本人にとっては大きな苦痛と感じられるだろう。

だが、悲観する必要はない。ある製造会社では音に敏感な特性を持つ障害者が加工中の異音に気づき、不良品を未然に防いで表彰された例もある。発達障害の方がその特性を生かして、ソフトウェアのバグを徹底的に洗い出す業務において活躍している例もよく知られている。

もちろん、すべての障害を「強み」に変えろという話ではない。まず必要なのは、障害特性が不利に働く場面をいかに減らせるか。
その上で、その人の得意なことと仕事を丁寧に結びつけることだ。

「何人雇ったか」だけでなく、そこでどう働けているか。障害者雇用は、そろそろ入り口の数字を競う段階から、「いかに適した仕事とマッチングできたか」に視点を移していくべきではないか。

「数合わせ採用では定着しない」中小企業の6割が未達成の障害者雇用。乙武洋匡が訴える“数字の罠”
乙武洋匡
<文/乙武洋匡>

【乙武洋匡】
1976年、東京都生まれ。大学在学中に執筆した『五体不満足』が600万部を超すベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、小学校教諭、東京都教育委員などを歴任。ニュース番組でMCを務めるなど、日本のダイバーシティ分野におけるオピニオンリーダーとして活動している
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