11月1日に東京競馬場で行われた天皇賞・秋。1番人気に支持されたクロワデュノールは勝ち馬から0秒7差の5着に敗れた。
昨年の日本ダービーを制した実力馬にとって、期待外れの結果だった。
 だが、レース後に注目を集めたのは着順だけではなかった。主戦の北村友一騎手から世界的名手C.デムーロ騎手への乗り替わりを巡り、SNSで批判が再燃したのだ。

黄金コンビ解消に賛否

「北村友一を替えた結果が5着」…クロワデュノール敗戦で批判再...の画像はこちら >>
 そもそも北村騎手とクロワデュノールのコンビは、昨年の日本ダービーに続き、今年は大阪杯、天皇賞・春を連勝。宝塚記念でも逃げたメイショウタバルにクビ差まで迫った。春の古馬G1で3戦続けて連対しながら、秋初戦で黄金コンビは解消に至った。

 乗り替わり発表時には、SNS上でも賛否が割れていた。北村騎手の降板を惜しむ声がある一方、C.デムーロ騎手の起用を歓迎するファンも少なくなかった。

 中には、斉藤崇史調教師への批判に対して、次のように指摘する投稿もあった。

「そもそもファンが『特定の馬に特定の騎手』のドラマを求めすぎていると思う」

 競馬は勝負の世界だ。たとえ結果を残してきた騎手でも、さらなる勝利を求めて別の騎手に託す判断もある。事実、C.デムーロ騎手は世界の大舞台で実績を積んできたトップジョッキーであり、陣営がその手腕に期待したとしても不思議ではない。

調教師の発言が話題に

 一方、北村騎手の降板に納得できないファンもいた。9月末の乗り替わり発表時には、「近走1着、1着、2着で乗り替わりはかわいそう」といった声も上がっていた。


 さらに議論を呼んだのが、10月28日の共同記者会見で斉藤調教師が語った内容だ。宝塚記念では4コーナーでもう少しメイショウタバルに接近し、直線でも早めに並びかけてほしかったとの思いを明かした。

 斉藤調教師は勝ち馬の強さも認めており、北村騎手を名指しで批判したわけではない。それでもSNSでは、主戦騎手の騎乗に対する不満と受け止める声が上がった。

宝塚記念2着は「評価されるべき騎乗」だった?

 では、宝塚記念の2着はどう評価すべきだったのか。

 斉藤調教師は宝塚記念の4日前に行われた共同会見で、調教を重ねても状態が思うように上向かず、物足りない部分が残っていると説明していた。またレース後、北村騎手は4コーナーで内側の傷んだ馬場を通った際、馬のバランスが乱れたと振り返っている。

 当日は重馬場。そうした条件で勝ち馬をマークし、クビ差まで追い詰めた。もっと早く動けば勝てたのか。それとも馬場状態を考えれば、十分に評価されるべき騎乗だったのか。

名手との初コンビで5着…進路確保に苦しんだ天皇賞・秋

 そして迎えた天皇賞・秋。C.デムーロ騎手は実戦では初コンビだった。

 最内の1枠1番からスタートすると、道中は6番手を追走。
しかし直線では馬群が密集し、思うように進路を確保できなかった。

 さらに、C.デムーロ騎手自身は最後の直線で内側に斜行。ジョバンニとリアライズシリウスの進路に影響を与えたとして、JRAから戒告を受けている。

 進路が塞がれたことには不運な面もある。だが、そうした状況を予測し、回避することも騎手の技術の一つではないか。

 元騎手の安藤勝己氏は自身のXで、C.デムーロ騎手が早めに外へ出そうとした点に着目。1番人気の重圧や初騎乗の影響を指摘し、もう少し待てば進路が開いたのではないかとの見解を示した。

 一方、C.デムーロ騎手はレース後、休み明けによる馬の反応の鈍さを敗因の一つに挙げた。レース前には陣営も仕上がりに手応えを示していただけに、その評価は果たして正しかったのだろうか。

浮き彫りになった「騎手選びの難しさ」

 さらに、レース後のSNSではC.デムーロ騎手の位置取りを疑問視する声も上がった。

「北村なら控えずに先行策を取っていただろう。ifなのでその結果は分からないが、乗り替わり否定派からすれば黙っていられない結果だろう」

 実際、北村騎手は大阪杯や天皇賞・春で早めに動き、クロワデュノールの持続力を生かして勝利をつかんでいる。
今回はどの戦法が正解だったかはわからないが、継続騎乗によって培われた馬への理解は、名手の技術とは別の強みだったはずだ。

 北村騎手なら勝てたとも、今回の5着だけで乗り替わりが失敗だったとも言えない。

 しかし、宝塚記念ではもっと早く動くことを望んだ陣営が、天皇賞・秋では動きたい時に動けなかったと敗戦を振り返ったのは皮肉な結果だった。

 騎手の技量、馬の状態、枠順、展開。そして、積み重ねてきた馬との阿吽の呼吸。勝敗を分ける要素は一つではない。だからこそ、すでに結果を出していた主戦騎手を替える判断には、さまざまな意見があって当然だ。

 勝利を求めて名手に託すのか。それとも、馬と騎手が積み重ねてきた経験を重視するのか。クロワデュノールの5着は、騎手選びの難しさを改めて浮き彫りにしたのではないだろうか。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。
ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。
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