女優の柏木由紀子(77)が今、“おしゃれ番長”として注目を集めている。2017年から始めたインスタグラムは同世代の女性を中心に人気を集め、フォロワー数11万人を超える人気ぶり。
紫の服に身を包んだ柏木は「お花とぴったりね」とキュートに笑った。「この時期は暑かったり、ちょっと寒かったり、お洋服を選ぶのも大変なんですけど、今日探していたらこのお洋服を見つけて、色も素敵だし、これにしよって決めました」。中庭の紫の花と示し合わせたようなコーディネート。柔らかな風に吹かれ、シャッター音に応える柏木は輝いて見えた。
70歳で始めたインスタグラム。美しい着こなしのファッションが注目を集め、フォロワーは11万人を超えた。今や坂本九さんの妻というよりも、大人女性のファッションリーダーの印象が強くなっている。スポーツ報知の名刺を見て、「いつも記事にしてくださり、ありがとうございます!」とニッコリ。インスタグラムの投稿を取り上げたネット記事を見ているといい、「私のこと、“おしゃれ番長”って言ってくださったのは、きっと報知さんなんですよ。うれしくって」と笑顔を見せた。
このほど刊行したライフスタイルエッセー「YUKIKO STYLE」(講談社)では、スタイリッシュなコーディネートや、趣味、生き方を紹介し、キュートな77歳が“できるまで”が記されている。「買い物に行ったりすると、とてもおしゃれで、私よりも若い方々から『いつも見てます』って声を掛けられることが多いです。インスタを始めたら皆さんが近くなった気がする」
ファッションは自身を「切り替える」スイッチだ。「午前中はひどい格好をして床を磨いたり、庭のお花に水をあげたり、土仕事をしてるんです。でも、ずっとその格好でいると、鏡を見ても『ああ、なんか具合悪くなっちゃいそうだな』って思うから。それがすべて終わったら、着替えて、お出掛けするのが好き。おしゃれして、パキッとして、そのギャップを感じること、切り替えが私には必要なんです」
幼い頃からファッションが大好きだったという。「子供の頃は布を一枚買ってきて、半分に折って真ん中に穴を開けて頭を通してお洋服みたいなものを作ったりとか」。小学5年生の頃、母に連れられて「劇団若草」に入団。ジュニアのファッションモデルなどをこなすようになった。「母はたぶん内弁慶だった私を心配して劇団に連れていったのだと思います。私はお芝居よりも、ファッションのお仕事の方が好きでした(笑)。
取材場所は柏木の自宅だった。20年前に建て替えた家の壁には、自身と娘たちの名前が刻まれている。「まだ塗装が軟らかいうちに箸で書いたんです」。特にこだわったのはリビングとオープンなキッチンだ。「前のおうちはキッチンに行くと、リビングの人たちが見えなくなっちゃう形だったんです。でも、今はこういうふうにオープンにして。お茶入れながらお話しできたりするでしょ。ここで打ち上げもやったりするのよ」
パーティーで活躍するのは仕切りのついた本格的なおでん鍋。40~50年愛用しているという銅の鍋は九さんのお気に入りだった。「主人はスタッフの人を呼んできて、うちでおでんパーティーするのが好きだったの。みんな食べながら飲みながら、このおうちでもその鍋が活躍中です」
家の一角には九さんのレコードなどが並べられている。1985年の日航ジャンボ機墜落事故で九さんが亡くなって、今年で40年がたつ。
現在の趣味であるマージャンは九さんから教えられたもの。デートの口実に人数合わせに呼ばれたのが始めたきっかけだという。「若い頃は何時間も座っているのはできなかったのですが、20年ほど前に再開しました。頭の体操にもなるし、とっても楽しくてよくやってます」
著書では、事故の半年後から仕事復帰をした当時を振り返っている。「おしゃれどころの日々ではありませんでした」と振り返りつつ、人前に出る時間が増え、「きれいにしてなきゃ」という意識が芽生えたという。「あえて明るい色のお洋服を着るようにしていました」。最後の5行は「私の大切な人、ひさし(九さんの本名)さんへ」と九さんへ向けた言葉がつづられ、九さんからの「きれいにしているユッコが好きだから、仕事は続けたら?」という言葉も明かしている。
「ファッションは自分を元気にしてくれるもの」という柏木のこれからの目標も、もちろんファッションに関わることだ。「自分のオリジナルの商品を作れたらって思っています。
◆柏木 由紀子(かしわぎ・ゆきこ)1947年12月24日、東京都生まれ。77歳。64年に映画「明日の夢があふれている」でデビュー。「舞妓(まいこ)さん」「細うで繁盛記」などドラマにも多数出演。71年に歌手・坂本九さんと結婚するが、85年、日航機墜落事故により坂本さんが他界する。長女は歌手・大島花子、次女は元宝塚の舞坂ゆき子。血液型A。