◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 脱竹。だっちく、と読む。

松竹芸能を脱出して他事務所に所属し、主に東京で活躍するお笑いタレントを指す言葉だ。2、3年ほど前から使われており、代表例に、さらば青春の光、みなみかわ、Aマッソらがいる。

 そんな風潮と一線を画す“在竹”42年目のベテランもいる。4月8日付スポーツ報知で右膝手術を受けると明かした森脇健児(58)だ。昨今の脱竹ムーブメントに何を思うのか。

 「辞めて成功してるやつ、いっぱいおるけど、素晴らしいと思います。でも僕はね、高卒ドラフト1位ルーキーやったんでね」

 第1回松竹芸能タレントオーディションで優勝し、1984年、京都・洛南高2年在学中にして老舗事務所に所属することとなった“昭和の怪物”が続けた。

 「ドラ1で入って、当時のスタッフが大プッシュ。でも何にもできない。ディレクターや作家からはボロカス。それでも会社が諦めずにマウンドに上げてくれるんですよ。マネジャーが『ざまKAN』つくってくれて、『笑っていいとも!』入れてくれて、トレンディードラマ入れてくれて…」

 ウケなくてもスベり倒しても“登板機会”を与え続けてくれたのだ。

夕方の帯番組「ざまぁKANKAN!」(読売テレビ=88~90年)を足がかりに全国区のアイドル芸人となり、我が世の春を謳歌(おうか)した。一方で、度々ネタにする“やらかし”で失意の帰阪も経験した。だとしても…。

 「やっぱり、ご恩は忘れないです」

 しんみりとうなずく58歳。師匠の若井はやと(故人)ら“昭和の純度100%の芸人”への憧れを持ち続けていることも、脱竹しない理由のひとつだ。

 「そう言いながら、記事と同時になぜか辞めてるかもしれないですけどね(笑)」(芸能担当・田中 昌宏)

 ◆田中 昌宏(たなか・まさひろ)1997年入社。吉本総合芸能学院(NSC)大阪校15期生。同期を取材するのが楽しい。

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