◆NHKマイルC・G1追い切り(5月7日、栗東トレセン)

 第30回NHKマイルC・G1(11日、東京)の追い切りが7日、東西トレセンで行われた。2歳マイル王者のアドマイヤズームは、朝日杯FSを制した時と同じ内容の“勝負仕上げ”が施された。

 もう何もすることはない。アドマイヤズームは栗東・坂路で手綱を動かされることがほとんどなかった。それでも、全身を大きく動かしながら、闘争心がみなぎる走りで急勾配を駆け上がる。最後まで理想的な加速ラップを刻みながら、52秒9―12秒0。「そんなに無理をせず、大きな負荷をかけず、息を整える程度に乗りました」と友道調教師は満足げに説明した。

 年頭から大目標としてきた3歳マイル王決定戦。現役2位タイのJRA・G1、22勝を誇る名門厩舎は絶妙なさじ加減で仕上げた。ポイントはトレーナーが「しっかりやって、馬にスイッチを入れるという感じ」と振り返る1週前追い切りだ。CWコースで7ハロン96秒8(6ハロン80秒5)―10秒7と極上の切れを見せた馬上にはレースで騎乗する川田ではなく、荻野極がいた。実はG1初勝利をつかんだ昨年末の朝日杯FSと同じパターンだ。

 友道師は言う。「レースでも乗る川田が調教で乗ると、敏感に反応する可能性がある。

ただ、スイッチは入れたいので、違う騎手に乗ってもらって、負荷をかけました」。まだ、幼さの残る気性面には細心の注意を払っている。前走のニュージーランドTは中間の追い切りで一度も騎手を乗せず、先を見据えた前哨戦仕様。しかし、今回は成功体験を踏襲した“勝負仕上げ”で大一番へ送り出す。

 友道師にとって、19年アドマイヤマーズ以来の勝利となれば、師匠で元調教師の松田国英さんに並ぶ最多の3勝目。前走後には朝日杯FSで先着したミュージアムマイルが皐月賞を完勝した。「皐月賞で、改めて朝日杯のレベルが高かったんだなと実感しました。本当に馬の具合はよくなっている。マーズのように、年末に香港に行けたらいいなと思っています」。目の前に広がる大きな青写真は確かな自信があるからこそ。大一番を知り尽くす厩舎力で磨き上げた高い資質が最上級の輝きを放つ。(山本 武志)

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