ベルテックス静岡が5日のB2プレーオフ(PO)準々決勝の第3戦で富山に敗れ、今シーズンを終えた。リーグ戦で34勝26敗の西地区3位と昨季の29勝(31敗)から勝ち星を伸ばし、B2昇格2年目でPO初勝利をマークするなど確かな進化を見せた。
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B2昇格1年目の昨季と同じPOの準々決勝敗退に終わったが、内容的には成長を示したシーズンだった。借金2で終わった23―24年シーズンから貯金8へと大幅に勝ち星を伸ばした。昨季は最終戦でワイルドカードの切符をつかんだが、今年は西地区3位でPOの権利を手に入れた。ヘッドコーチ業1年目で当初は、期待と不安が同居していた「森ベルテ」が確かな“成果”を残した。
東大出身の指揮官が、ファクンド・ミュラー前ヘッドとはカラーが違うチームを一からつくり上げた。リーグ2位の3点シュート成功率を誇ったチームから方向転換。新ヘッドは「超攻撃的ディフェンス」をテーマに掲げて守備を重視した。インサイドにリバウンドの強い選手をそろえ、大崩れしないバスケを目指した。
チームづくりに際して森ヘッドが大切にしていたのがコミュニケーションだった。練習中は語学力を生かして英語で指示。
「自分が英語で話して日本人選手には通訳を介して伝えようと。バスケ用語なら日本人選手にも理解できますから」。指導者の意図が助っ人にもスムーズに伝わった。日本人指揮官に代わり、アルゼンチン人の前ヘッドと比べて、練習中、選手との会話も増えた。
アシスタントコーチ陣とも密に情報を共有した。試合中、タイムアウト直後は必ず最初にスタッフ4人で意見交換。「1つのジャッジで勝負が決まる。コーチから色々な情報を仕入れる作業をして、そこから選手に伝えることにしていた。ヘッドコーチになって『情報量』が格段に増えました」。試合状況、相手の戦術を踏まえ、どの作戦が最適か、瞬時に選択し、的確に選手へ指示を送った。
普段の練習で目に付いたのは細部にこだわる「徹底力」だ。
ベルテの1試合平均失点75・5点は14チーム中3番目の少なさ。テーマに掲げた「超攻撃的ディフェンス」をつくり上げたのは森ヘッドの「コミュニケーション力」と「徹底力」だった。
(塩沢 武士)