◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 記者のちょっとした好奇心が一頭の競走馬のデビューを後押しすることになるかもしれない。きっかけは地方競馬全国協会(NAR)が選定するNARグランプリの表彰馬選定委員に22、23年と参加させていただいたからだ。

これから長い年月続くであろう地方競馬の“歴史”にかかわり、積み重ねの大事さを改めて思った。

 記者なりに“競馬の歴史”を伝えられたら…。そんな思いから長く競走馬のオーナーを続けている方々にお話をうかがうのが最初の一歩になるのではと考えて、思い入れのある血統を祖父の代から半世紀以上もつないでいる(株)ダイリンの鳥居聡さん(57)に取材を申し込んだ。大手の牧場でも難しい事業を個人オーナーが行っていることにとても興味をひかれた。

 以前と比べれば競走馬にするためのトレーニング費用が高騰するなど維持費が大変な時代となったが、鳥居さんは競馬を日本の文化として定着させたいと血統の継承に並々ならぬ意欲を示しており、取材時には現在1歳(最初の所有馬から5代目)の子馬をデビューさせるべく、クラウドファンディングで育成費用を募る案を話していたのだが、厳しい審査を通り、実現する運びとなった。

 紹介文には鳥居さんの競馬にかける情熱とともにプロジェクトを開始するきっかけが記者の取材だったという文面があった。これほど記者冥利(みょうり)に尽きる瞬間はなかった。(地方競馬担当・蔵田 成樹)

 ◆蔵田 成樹(くらた・まさき) 1992年入社。NFLサンフランシスコ49ersのファン。第29回スーパーボウルを現地観戦して以降、全米NO1から遠ざかっているのが気がかりで…。

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