◇明治安田J2リーグ 第16節 札幌2-1富山(17日・大和ハウスプレミストドーム)

 北海道コンサドーレ札幌が劇的弾で3試合ぶり勝利をつかんだ。ホーム・富山戦は前半44分に先制されるも、後半23分にFWバカヨコ(29)のゴールで追いつき、同47分、中央18メートルのFKをMF青木亮太(29)が決め、2―1で逆転勝ちした。

昨季途中までキッカーは未経験だったが、卓越した技術と欠かさない練習の成果を土壇場で発揮し、暫定12位への浮上につなげた。

 1―1の後半アディショナルタイム(AT)に訪れた、中央18メートルからのFKの好機。青木は冷静に狙いを定め、右足を振り過ぎずにボールを蹴った。「いいコースに行ってるな」。感触通り、壁を越えてネットに吸い込まれた劇的弾。仲間にもみくちゃにされ「最後の最後なので。めちゃくちゃうれしかった」と、あふれる感情を素直に言葉にした。

 キッカーを務めるのは昨年7月から。学生時代も経験がなかったが、右足のキッカー不在の状況に、高い技術を買われ白羽の矢を立てられた。今年からは全体練習後の居残りFKを日課とした。仲間のキックも参考にし、微調整しながら一本一本を確認しながら蹴り、感覚をつかんできた。“布石”もあった。

15日の練習で、1本目のFKを中央左寄りの仲間に合わせると見せかけ、ゴール右にライナーでたたき込んだ。皆が感嘆の声を上げた弾道に「練習からいい感覚があった」といい残像が残っていた。

 昨年11月9日のアウェー・湘南戦では、1―1の後半ATに同様のFKを外した。「決めていればJ1に残れてたかもという思いはあって。同じような状況で頭をよぎったが、しっかり集中して蹴られた」。重圧のかかる場面で、雪辱を果たす一発に「まだまだ試合の雰囲気に流されそうなところはあるが、今日に関しては落ち着いてやれた。練習が少しは実になってるのかな」と積み重ねの成果を喜んだ。

 ハーフタイムには「初めて」ゲキも飛ばした。「ミスは取り返せばいいことだが、怖くてやらないとかは嫌い。ただ前半はふわっとしてる雰囲気が出てたので。予測して早く動くためにも『頭を使ってくれ』と」。私生活では後輩の飲み物も率先して作るような穏やかな性格だが、勝利のために語気を強めた。

言い合いにもなったが「後半みんなの反応が少し良くなったので。そこは少し意識しながらできたのかな」とほほ笑んだ。青木のプレーと言葉が、今季3度目の逆転勝利につながった。

(砂田 秀人)

 〇岩政大樹監督(2得点について)「(バカヨコの)同点ゴールはこれまでのチャンスメイクだけでなく、あの位置にしっかりといたことが大きい。(決勝点は)なかなか見られないシーンでしたね。あの時間帯にFKで入るのはほとんど見たことない。驚きました」

 〇…FWバカヨコの進化が3試合ぶりのゴールにつながった。後半16分からピッチに立つと、その7分後、こぼれ球に滑り込みながら反応し、左足でチーム最多タイの4得点目をゴールへとたたき込んだ。これまではボールが欲しいあまり、1トップにも関わらず、ゴールから遠い位置で受ける場面が少なくなかった。「負けている状況だったので。下がることよりいいポジションに入ることを意識した」。点取り屋としての仕事を全うし、貴重な同点弾を挙げた。

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