◆明治安田 J1リーグ▽第17節 浦和3―2FC東京(17日・埼玉)

【浦和担当・金川誉】浦和の逆転勝利を見届け、腑(ふ)に落ちたことある。これが浦和サポーターが求めていた原口元気の姿か、と。

この日は途中出場から2得点を決めたMF松本泰志、さらに松本のゴールをアシストしたMF金子拓郎、関根貴大とこの日は途中出場の選手たちが結果を残した。同じく途中出場として、原口が見せた躍動感あふれるプレーは、終盤の逆転劇に一役買った、と言える。

 松本のゴールで追いつき、2―2で迎えた後半45分、原口は左サイドで縦に仕掛けてクロス。さらに同47分には中央へのカットインから右足シュートを放ち「久しぶりにやりたいようなプレーができた。ここ2、3週間、ずっと1対1の練習を、全体練習後にやってきたんで。自然と体が動いてきた、という感じはします。一つ手応えになった試合」と充実感をにじませた。

 今季はリード時、守備固めの役割を担う試合も多い原口。それでもSNSなどには、攻撃面での活躍が足りない、と厳しい言葉が並ぶこともあった。本人が、そんな声を目にしていたのかはわからない。ただ13日の練習時には、年齢的な衰えと向き合うような言葉があった。「純粋なスピード感とかは、やっぱり落ちてしまっている。

相手との駆け引きをやっていかなきゃいけない」。かつてならスピードやクイックネスではがしてきたドリブルから、変化の必要性を明かしていた。

 34歳となり、肉体的な変化は避けられない。それでも変化ではなく、原点へと立ち返ったこともある。この日は「ちょっとボールの置き場所を変えました」と明かした。左サイドでパスを受ける際。「(今季は)逃げるようなタッチ、右足で止めるようなシーンが多かったんですけど、(練習から)左足で止め始めた。それを反復していたら、戻ってきたというか。練習は大切だな、と。ボールを失わないために、相手から一番遠い、(右足)アウトサイドで止めるシーンが多かった。でもスピードに乗るためには、左のインサイドで(ボールを)外側に置く、というのは昔からやっていたことなので」。相手ゴールに向かうための初動と言えるファーストタッチを、意識的に変化させていた。

 ボールの置き所の違いはわずか。しかしドリブラーとして、守りの姿勢から攻めの姿勢への回帰、と言える。2ゴールの松本ら自身と同じ“サブ組”の活躍に「誰にでもチャンスがある、というメッセージになる。これで新たな競争が生まれ、チームの刺激になると思う」とうなずいた原口。シャワーを浴びたはずの試合後にも、まだ額にはうっすらと汗がにじんでいた。ベテランがチームに与えるものは、経験や落ち着きだけではない。激しい競争の中で生き残ってきた選手だけが持つ熱量は、首位鹿島を追って優勝争いに加わりたいチームにとって、必要不可欠なはずだ。

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