◆FA杯決勝 クリスタルパレス1―0マンチェスターC(17日、ウェンブリー・スタジアム)
日本代表MF鎌田大地(28)が所属するクリスタルパレスはイングランド・サッカーの聖地ウェンブリー・スタジアムで強豪マンチェスターCと対戦。鎌田は日本の天皇杯のモデルとなり、今回で144回目を数える世界最古のカップ戦決勝に日本人選手として初先発。
鎌田がやった。1861年創立のクリスタルパレスが初タイトル。28歳日本代表MFが先発フル出場を果たし、164年間無冠だったクラブに由緒ある世界最古のカップをもたらした。
試合開始直後からマンチェスターCが完全にポゼッションを支配した。90分を通しても78・3%。しかし先制したのは守りに守ったクリスタルパレス。前半16分、電光石火のカウンターからエースのエゼが決めた。
鎌田もこの値千金のゴールに絡んだ。センターライン付近でデ・ブライネにプレスをかけられ、倒れ込みながらも前方のマテタにボールを送った。するとマテタがすかさず右サイド走ったムニュスにパス。
しかし同36分、マンチェスターCにPKが与えられた。ところがこの絶体絶命のピンチをGKヘンダーソンが救った。エジプト代表FWマルムシュが左隅を狙ったPKを横っ飛びでセーブ。鎌田は試合後「ディーノ(ヘンダーソン)がPK止めた時、あの時に(優勝が)あるんじゃないかと思いました」と語った。クリスタルパレスに流れが傾いた瞬間だった。
鎌田は本当に良く走った。左サイドのインサイドハーフでありながら、右サイドにも走り込んで相手を止めた。後半11分にはポルトガル代表MFシルバのシュートを滑り込んでブロックした。
至近距離でシルバがシュート体勢に入り、完全に決まったかと思われた瞬間、鎌田が猛然とスライディング。これも王者マンチェスターCをゼロに抑え、1―0勝利を収めたクリスタルパレスの大きな分岐点となったプレーだった。
鎌田は1点を守り切った優勝を「今日のように相手にボールを持たれた試合で6番として90分やれて勝った。それは自分の守備力が向上したことだと思う。今季は自分の得意じゃない部分を伸ばさないと試合には出られないと思った。そういうところをしっかりやって、こういう舞台でできたのは良かったと思います」と話して胸を張った。
本当に運動量が多く、勝ちたいという気持ちが表れたパフォーマンスだった。しかも冷静だった。
「ヨーロッパリーグ優勝経験もあり、こういう舞台もこれが最初ではなかったですし、落ち着いてプレーができた。ファンの声援もパレスの方が良かったと思います。そういう意味で選手だけでなく、サポーターも含めてチームとして戦えた試合でした」と鎌田。
日本人として初のFA杯決勝先発フル出場だった。そして優勝。しかしその偉業に関しては「まだこれがどれだけすごいことなのかは実感はない」と話したが、「こういうカップ戦は勝つことが全てだと思うので、こうして勝てたことはチームとしても個人としても良かった」と続けて安堵の表情を見せると、イングランド・サッカーの聖地ウェンブリー・スタジアムを後にした。