今春、京都産業大学バスケットボール部で主将を務めた宇都宮陸がプロバスケットボールリーグ(以下、B.LEAGUE)1部のファイティングイーグルス名古屋と契約を結び、長年の夢を実現させた。大学4年生で第51回関西学生選手権と2024年度 関西学生リーグ戦の2冠を達成し、自身も最優秀選手賞(MVP)に輝いた実力者。

1年生のときからスタメンに名を連ね、在学中にはB.LEAGUE2部(B2)の愛媛オレンジバイキングス、続いて同1部(B1)のアルバルク東京で特別指定選手としてプロの試合を経験した。強豪ひしめく関東ではなく、関西の大学からB1入りを果たす異例のステップで、全国から注目を集める存在だ。

 「夢が叶った」。晴れやかな表情でそう語る宇都宮。小学生の時に観たプロバスケットの試合が、すべての始まりだった。幼い頃に抱いた憧れは、確かな努力と信念に支えられ、ついに現実のものとなった。

 出身は愛媛・松山だが、高校は兵庫の強豪・報徳学園を選んだ。持ち味のスピードとバスケットIQを武器に、チームを初のインターハイベスト8進出へ導いた立役者となった。

 大学は「早い段階からプロの世界を経験したかった」という理由で、関東ではなく京都産業大へ進学。1年生から主力として出場機会を得て、初の公式戦である第48回関西学生選手権ではいきなり総アシスト数2位を記録。関西の地で着実に成長を重ねていった。

 また、在学中に特別指定選手としてプロの舞台で得た経験は、プレーの精度を一段と高めた。

試合を動かす視野の広さ、仲間を生かすパスセンス、そして勝負所での冷静な判断力は、確実にプロの水準へと引き上げられていった。

 宇都宮が大学4年間で磨き上げたのは、「ゲームコントロール力」だ。試合の流れを読み切り、攻守にわたりチームを支える存在に成長。最終学年では主将としてチームを率い、関西学生2冠を達成した。インカレでは関東勢に敗れるも、「関西の大学へ進学したことに悔いはない」と語る。

 「楽しさを忘れてはいけない」。これは、宇都宮が愛媛、兵庫、京都と環境を変えていくなかでもずっと胸に抱き続けた信念だ。目の前のプレーを楽しみ、仲間と喜び、そして観る人にもバスケットの魅力を伝える。その姿勢こそが、宇都宮の最大の魅力であり、強みでもある。

 そして今春、B.LEAGUE1部チームとの契約という新たな扉が開いた。実力本位という厳しい競争の中でも、「見ている人を楽しませる選手を目指したい」と意欲を見せる。厳しい競争の世界にあっても、宇都宮はその変わらぬスタイルで、プロバスケ界に新たな彩りを加える存在になるはずだ。

【大道 莉和】

◆宇都宮陸(うつのみや・りく)2002年12月6日、愛媛県松山市生まれ。22歳。ポジションはポイントガード(PG)。177センチ、71キロ。2021-22シーズンに愛媛オレンジバイキングス(B2)、22-23年にアルバルク東京(B1)に特別指定選手として出場。京都産業大では1年生から主力として活躍し、最終学年では主将としてチームを関西学生2冠に導き、自身もMVPを受賞。

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