俳優の竹財輝之助(45)が、主演・助演、役柄のイメージにこだわらず、多彩なキャラクターで存在感を発揮している。近年では「クズ役」に定評があり、昨年のテレビ東京系「夫の家庭を壊すまで」や、放送中の同局系「夫よ、死んでくれないか」(月曜・後11時6分)で演じる主人公の夫役がインパクトを残し、SNS上で「クズ職人」と呼ばれることも。
柔らかい声質、ゆったりした口調。優しげで高潔な雰囲気をまとう竹財だが、近年はクズ役のオファーがめっぽう多い。
「作品の感想で『相変わらずクズやってるね』と言葉を頂くのは、ありがたいことだなと思います。クズ役は昔からやってきたんですけど、『こいつが出てくる=クズだ』っていうぐらい浸透してくれたのは初めてなので、役者として幸せだなと思います」と感慨深げに話す。
SNS上などでは“クズ職人”の異名を取ることも。「以前、あるプロデューサーに『何で僕にこの(クズの)役をくれたんですか』って聞いても『自分で分かってないの?』って言われました。結局教えてくれなかった。でも、ヒールらしさは大事にしたいし、(演出で)気を使われて、いい人ふうに持っていかれても悔しい。相手の女優さんだったりが(怒りを)溜(た)めていけるようなお芝居をしているつもりではありますね」
学生時代、アルバイト先のたこ焼き店オーナーからモデル関係の知人を紹介され、当初はモデルを目指していた。「上京してお世話になったのが今の事務所。モデル志望だったけど、同世代の役者を目指している人たちと演技レッスンをすることになった。
役者業を始めた20代のころはガムシャラだった。「とにかく映ってやろう、他人を蹴落としてでも出てやろう、という負けず嫌いな部分があって。周りの空気感を考えて芝居したことがなかった」。2006年テレビ東京系「怨み屋本舗」シリーズで共演した寺島進(61)からの金言で向き合い方が変わった。
「めっちゃ怒られたんですよ。『あんちゃんよ、おまえがリズム崩してるの分かってる? 芝居のテンポがちょっとズレてるんだよ』って。そんなこと考えたこともなかったから、素直に『何ですか、それ。教えてください!』って。演技指導してもらえたことはありがたかったですね」
05年の昼の帯ドラマ「緋の十字架」で共演した西村和彦(58)からは「技術的なことをいっぱい教わった」という。「カメラに立つ時には女優さんに絶対影を作らないとか、胸ぐらをつかむ時にどうやって引き上げれば相手がギュッと苦しそうに見えるか、とか。テレビドラマを円滑に進めるために必要な技術を教えていただきました。今、僕ができているのはそのお二人のおかげかなと思います」
年を重ねるにつれて、役者の仕事は個人技ではないことが身に染みて分かるようになった。
団体競技の神髄を味わったのが18年のフジテレビ系「ポルノグラファー」。現在はBLドラマが多く作られているが、その先駆けとなった作品だ。「僕は若くはなかったので『そんな俺でもいいんだ』って思いました。以前ご一緒した三木(康一郎)監督から声をかけてもらったんですが、一回仕事した人に声をかけてもらえるのが僕は一番うれしい。声かけてくれたんだったら、とことんやろうと。プロデューサーさんには『現場で必要なことは全部やるんで、地上波の放送コードと闘ってください』と」。原作漫画から抜け出たような再現度の高さが評判を呼び、続編や映画も製作。今でも根強いファンが多い。
同作を機に応援してくれるファンの熱量に触れ、先日も自身のファンミーティングを終えたばかり。
芝居する上で心がけているのは「現場の空気感を一番大事にする」こと。「原作があるものをやらせていただく時、僕自身は原作に寄せたい派ですが、相手の役者さんがどういうしゃべり方をするのかで変わってきますし。原作を超えてやろうとか、大それたことは思っていないですけど、基本的には現場で生まれたものを大切にするっていうのが一番ですね」
45歳。役のストライクゾーンは年々広がりをみせる。「クズのイメージが強いと思うんですけど、それ以外の役を振ってくれる時はワクワクする。『何で振ってくれるんだろう』っていうのを考えるところから楽しくなります。僕で遊んでくれる方も増えてきた。つい最近も。
◆竹財 輝之助(たけざい・てるのすけ)1980年4月7日、熊本県生まれ。45歳。学生時代にモデルとして活動開始。2004年テレビ朝日系「仮面ライダー剣(ブレイド)」で俳優デビュー。07年映画「未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~」のメインキャストに抜てき。近年の出演作にテレ東系「部長と社畜の恋はもどかしい」「全力で、愛していいかな?」、カンテレ「そんな家族なら捨てちゃえば?」など。妻は女優の藤真美穂。