女優の中谷美紀(49)が、原田マハ氏の人気ミステリー小説「リボルバー」のオーディオブック版で朗読を務めることになり、6月30日から「Amazon オーディブル」で配信される。このほどスポーツ報知などの取材に応じた。

 中谷はオーディブル作品では、24年に自身のエッセー「文はやりたし」を朗読した経験があるが、小説の朗読は初挑戦。これまでに2010年の映画「それいけ!アンパンマン」のゲスト声優や、ドキュメンタリーのナレーションなどを務め「声のお仕事は大好きなんです。物語の媒介に徹して作品に溶け込めるのがだいご味」と笑顔で明かす。

 「リボルバー」は、世界的画家・ゴッホの死の謎を追うミステリー。ゴッホやゴーギャン、パリのオークションハウスで働く日本人女性ら、性別や国籍が異なる10以上の人物が登場する。19世紀と現代を行き来する物語で「付け焼き刃で演じることはできない」と、オファーは二つ返事では受けなかった。

 葛藤が生じた時こそ体感するのが“中谷流”だ。パリのオルセー美術館へと足を運び、ゴッホの自画像などを鑑賞。「自分が演じる視点に立って実物を見ることで、画家たちの声、筆に込めた思いを感じ取ることができた。もしかしたら演じられるかもしれないと」。五感を研ぎ澄ませ、名画と対峙(たいじ)したことで心境に変化が生じた。

 原作の原田氏とは、21年の映画「総理の夫」でもタッグを組んだ間柄で、本作も「涙なしには読めなかった」と深い感銘を受けた。

収録は、電話帳ほどの厚さの原稿を手に5日間行い「地の文や独白のパートは作り込みすぎず自然な声色を意識しました。セリフの部分は、異国情緒も感じてもらいたい」とフランス語のセリフもこなした。性別や国籍の壁を越え“七変化”する演技力と、品性あふれる声色は世界観にぴったりだ。

 今年で事務所独立から10年を迎える。18年にはドイツ人ビオラ奏者のティロ・フェヒナー氏との結婚など環境も変化。活動も芝居や声優、文化芸術の発信など多岐にわたり「完璧でない自分を許したり、想定外のことも楽しんだ10年。出会いや刺激が日々の学びにつながっています」。尽きることのない探究心と、未知との出会いに突き動かされている。(奥津 友希乃)

 ◆原田マハ氏コメント

 「作家にとって、自身の小説がAudibleという新たなかたちで“トランスクリエーション”されることはても刺激的な体験です。中谷さんのアーティスティックなアプローチが加わった朗読を通じて、オーディエンスの皆さんが忙しい日常からふっと別世界にトリップでき、聴き終えた後には現実世界でも美術館に足を運びんで実は日常はアートに溢(あふ)れていることに気付いていただけるーーそんなきっかけになればと期待しています」

 ◆「リボルバー」 パリのオークション会社に勤務する高遠冴の元に、さびついた一丁のリボルバーが持ち込まれた。持ち主の謎めいた女性によれば「フィンセント・ファン・ゴッホの自殺に使われたもの」だという。冴は、会社の上司や友人らと調べを進める内に、ゴッホとゴーギャンの知られざる真実に迫っていく。

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