◆プロボクシング ▽WB世界バンタム級(53・5キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇王者・武居由樹(1回2分7秒TKO)同級7位・ユッタポン・トンデイ●(28日・横浜BUNTAI=観衆4000)

 WBO世界バンタム級王者・武居由樹(28)=大橋=が、同級7位ユッタポン・トンデイ(31)=タイ=の挑戦を1回2分7秒TKOで退け、2度目の防衛に成功。昨年4月にリニューアルオープンした横浜BUNTAIで初開催のボクシング興行のメインイベントを勝利で飾った。

IBF世界スーパーフェザー級王座決定戦は、同級3位・力石政法(30)=大橋=が、同級1位・エドアルド・ヌニェス(27)=メキシコ=に0―3の判定で敗れ王座獲得はならなかった。

 わずか127秒。武居が、3度倒して秒殺防衛を果たした。開始47秒、左ストレートでダウンを先取。キャリア初のダウンで明白にダメージが残るユッタポンになおも襲いかかり、左で2度目、3度目のダウン。元K―1王者は、それでも立ち上がってきた元ムエタイ王者に連打を浴びせ、トドメを刺した。「とにかくきょうは倒さなきゃと思って、最初から飛ばした。1ラウンドKOで勝てたことは幸せです」と声を弾ませた。

 ボクシング転向後は8戦連続KO勝利も、戴冠した世界戦、初防衛戦と2戦連続判定勝利。V2戦を前に、所属ジムの大橋秀行会長(60)からは「野性味がなくなった」と指摘された。「ベルトを巻いて守りに入っていた」と改心した武居は、「野性味が取り戻せたのかな、少し」と頬を緩めた。

 ジムのお膝元の横浜での興行。

前身の「横浜文化体育館」時代に井上尚弥、川嶋勝重らジムの先輩たちが激闘を繰り広げた会場で、鮮烈なKO防衛に成功した。井上尚弥が持つ、日本男子世界戦の最速70秒KOには及ばなかったが、メインイベンターとしての務めを見事に果たした。

 次戦は今秋、WBO1位クリスチャン・メディナ(25)=メキシコ=との指名試合が内定。クリアすれば、いよいよ宿命のライバル・那須川天心(26)=帝拳=との対戦が現実味を帯びる。武居は「彼はまだチャンピオンじゃないので、別にいいかな」とリング上で天心の名前を挙げることはなかったが、大橋会長は「指名試合が終われば面白い対決を実現させたい」と予告した。

 一方で、新たな夢も広がった。リングサイドで観戦していたWBA休養王者・堤聖也(29)=角海老宝石=の前で「まずは指名試合。それをクリアしたら、誰とだってやる。もう1本ぐらいベルトが欲しい」と統一戦にも意欲。会見で「もう1本」の真意を問われると「何でもいきます。最近になって、1本じゃ物足りなくなってきた」と回答。大橋会長は「(井上尚弥と対戦予定のWBC王者)中谷(潤人)じゃないのは間違いないです」と続けた。

127秒間で、武居がバンタム級戦線の主役に躍り出た。(勝田 成紀)

 ◆武居 由樹(たけい・よしき)1996年7月12日、東京・足立区生まれ。28歳。2014年11月にキックボクシングでデビュー。17年4月、K―1ワールドGPスーパーバンタム級王座獲得。19年6月、K―1同級世界最強決定トーナメント優勝。20年12月にボクシング転向。21年1月プロテスト合格、3月にデビュー。身長170センチの左ボクサーファイター。

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