◆第75回安田記念・G1(6月8日、東京競馬場・芝1600メートル)

 止まっていた時計の針が再び動き始めた。久々に味わう懐かしい感覚。

浜中俊騎手=栗東・フリー=が3年ぶりにソウルラッシュ(牡7歳、栗東・池江泰寿厩舎、父ルーラーシップ)の馬上に戻ってきた。2週前、1週前と追い切りに騎乗し、ともに栗東・CWコースでラスト10秒5と驚異の伸びをマーク。「いい動きですね。体がしっかりしてきて、以前よりバランスが良くなっています。すごい馬になりましたからね」。成長を感じ取り、自然と笑みがこぼれる。

 マイル路戦で軌道に乗り、読売マイラーズCを含む4連勝で迎えた2022年の安田記念。G1初挑戦の舞台で悪夢が待っていた。馬群の中で包まれた直線で進路を確保できず。ほぼ満足に追えないまま、完敗の13着に敗れた。次戦からは乗り替わり。しかし、自らの手を離れても、誰よりも熱く見守ってきた。

「出走しているレースは応援していましたよ。(日本時間の深夜だった)ドバイ・ターフも見ていました。ロマンチックウォリアーに勝った時は本当にすごいなと思いました」と振り返る。

 そして、3年ぶりに帰ってきた手綱。コンビ再結成が決まった時、石川達絵オーナーに「ありがとうございます。楽しみにしています」とLINEを送ると、「あの4連勝が始まりですから」と返ってきた。本当にうれしかった。そして、池江調教師も言う。「3年前の競馬もミスじゃない。たまたまですよ。チャンスがあれば乗ってほしかった。彼がソウルラッシュをマイラーとして、覚醒させてくれましたから」。

 海外のG1を制し、注目される国内復帰戦。重圧もあるが、それをはるかに上回る使命感、そして相棒への厚い信頼がある。「自分のミスで乗れなくなったのに、もう一回チャンスをもらえた。期待に結果で応えたい。今度こそ、と思っています」。全身全霊を込めて、手にしたい“忘れもの”。3年間募らせた強い思いを、もうすぐ現実へと変える。(山本 武志)

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