2.5次元ミュージカルなどで活躍する俳優の新木宏典が、出演する「ワタナベ25thコンサート『ハッピーバースデー&サンキュー』」(18~22日、東京国際フォーラムホールC)へ向け、取材に応じた。
渡辺プロダクションの企業精神を受け継ぎ、00年に事業開始した同事務所の25周年を記念したイベント。
事務所の顔ともいえるタレントの中山秀征もコンサートに出演し、歌唱予定。新木は事務所のパーティーなどで中山と一緒になったことがあるといい「いつもすごくいい方ですし、ひでさんが仕切ると、時間ぴったりにきれいに収まるんですよ(笑)今回のコンサートもきっと時間ちょうどに終わると思います」と独特な見所も紹介した。
自身の25年前を振り返り、25周年の重みを実感している。25年前の新木は高校生。「進路を決めかねている時期ですね。楽しいことが見つけられてなくて、結構悩んでいたと思います」
最初に役者を選んだのは消去法だったというが、その芸能生活も20年を超えた。ミュージカル「テニスの王子様」で05年に本格デビュー。演劇の世界に魅了され、現在はアニメ(2次元)を原作とした舞台作品(3次元)である2.5次元の世界で躍動している。「最近はSNSなどお金を払わないでも楽しめるエンタメが充実している。演劇というアナログな世界は商業的にすごくシビアになっていると思うんです。
一時期、2.5次元の世界は「歌とダンスがメインになってきてた時代があった」という。「役者志望で役者をするために2.5次元に入ってくる子っていうのが、すごく少なかった時期もあるんですよね。歌っていうのはすごく魅力的なんだけど、でも自分がやってきたのは役者なんだよな、役者業、演劇の魅力を伝えることっていうのが重要だなと。僕は大切にしたいなとそのとき、思ったので。役者に興味を持って始めた人たちが、役者ってやっぱり面白いなって思ってもらえるような姿を見せたいんです」
人生の半分をワタナベエンタで過ごし、41歳の現在、後世への思いも芽生えている。「僕と同じように演劇に魅了され、演劇というエンタメで生きていきたいって思った人たちが演劇で生きていけるための環境づくりっていうのは、ずっと引き継いでやっていかなきゃいけないことだと思う。僕自身の寿命の年数だけでどうこうできるものではないけれど、今、2.5次元作品というジャンルにいるからこそ、役者業が面白いって思ってもらえるために、取り組んでいきたいと思っています」
では、今から25年後の未来、66歳となった自身は何をしているだろうか。「引退していますね」と新木は即答し、笑った。「僕は俳優になって、人生100年時代の中で、倍速で生きるっていうのを目標にしようと思ったんです。50歳で死ぬぐらいのペースで、僕は頑張るっていうのを目標に置いてるんですね。…まあ実際問題無理なんですけど(笑)目標へ向けて死にものぐるいでやってきたけど、コロナ禍で健康への取り組みもしてしまったので、寿命はおそらく伸びてるんです。
そう言った新木の瞳には光が宿っていた。「まあ、まだこの世界にいたらいたで、祝福はしてほしいですけど(笑)」。これからも、舞台の上で生き続ける。大好きな演劇のために。(瀬戸 花音)
◆新木 宏典(あらき・ひろふみ)1983年6月14日、兵庫県丹波市出身。41歳。04年12月、若手男性俳優集団・D‐BOYSに加入。05年よりミュージカル「テニスの王子様」で2代目・乾貞治役を務める。07年にテレビ朝日系ドラマ「獣拳戦隊ゲキレンジャー」で理央役。