◆2026年北中米W杯アジア最終予選▽第10戦 日本6―0インドネシア(10日・市立吹田サッカースタジアム)

 元日本代表MFの中村憲剛氏(44)が日本代表の最終予選を総括。W杯に向けた現状と課題を指摘した。

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 オーストラリア、インドネシアの2試合で、多くの初代表選手を試せたことは有意義だった。W杯出場がかかった本気の相手とアウェーで対戦できることが貴重で、経験値を積み上げられたこと。そして、実際に選手を手元に置かないと分からないこともあり、真剣勝負の場で測れたことは大きな収穫と言えるだろう。

 中でもDF鈴木淳之介は今後、強い相手との試合でも見たいと思った。技術があり、左右の足でボールを蹴れる。対人プレーでも引けを取らなかった。Jリーグで良いプレーを続けていたが、国際舞台でも力を発揮した。ボランチで佐野海舟も普通にやれるところを示し、MF平河悠も持ち味を出した。

 W杯まで1年。これからは競争と並行して「形」を成熟させる必要がある。予選は3バックで勝ち点を稼いだが、2巡目からは対策されていた。特に、オーストラリアやサウジアラビアのように5バックで、スペース、サイドにフタをしてくる相手には苦戦を強いられた。

3バックは選手の立ち位置が決まりがちで、流動性が生まれにくいがゆえに対策されやすい傾向にある。アジアでは個の力がある三笘薫ら選手の力で引いてくる相手を攻略してきたが、W杯に向けては4バックなど、形で攻略する引き出しも準備しておきたい。

 「人」で言えば、各ポジションで枚数はそろっているように思う。DFラインは高井幸大ら若い選手が出てきた。サイドは三笘、堂安律、伊東純也と力のある選手がそろう。シャドー(1・5列目)は鎌田大地、南野拓実、久保建英を始め、人材豊富。課題を強いて挙げるなら、クロスまでいける攻撃的な左サイドバック、そして鎌田、守田英正のように相手を見極めた上で立ち位置を変えて流動性をもたらせる選手が増えれば、3、4バックともに完成度を高めることができるはずだ。

 これまでのW杯と比べれば、新戦力が予選を戦った主力選手の牙城を崩すことは難しい。言い方を変えれば、最もぜい沢な選択ができる。W杯で上位を目指すためには、4、3バックの併用を高次元で実現させること。そこで選手に求められるのは、可変に対応できる臨機応変さ。人、形ともにレベルアップし、本大会を迎えたい。

(元日本代表、川崎MF・中村 憲剛)

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