サッカーのイングランド・チャンピオンシップ(2部相当)のリーズを世界最高峰プレミアリーグ昇格に導いた日本代表MF田中碧(26)がスポーツ報知の単独インタビューに応じた。加入1年目から43試合5得点と主軸として活躍し、2部優勝。
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4月21日。リーズはホームでストークに6―0で大勝し、3季ぶりのプレミア復帰を実現させた。
「いや、もうホッとしてます。自分のベストイレブンやMVPはめっちゃうれしいけど、本当に昇格することだけのために来た。仮に昇格できなくて、ベストイレブンを取っても“0点”だったので、シーズンを通して、自分が求めてたものという意味では100点かなと思う。一番必要な目標を達成できた。それはチームメートのおかげでもあるし、チームとして100点だった」
昨夏にドイツ2部デュッセルドルフから移籍して1年目。年間46戦のタフなリーグで43戦に出場(先発は36戦)とチームの中軸を担った。リーグのベストイレブン、クラブMVPと、個人としても高い評価を得た。
「けがしなかったのは一つ、個人的には素晴らしかったかなと思う。
ボランチながら貪欲にゴールを狙い、5得点をマークした。
「個人的には数字がほしかった中で、前半戦の12月まではゼロ(得点)だった。最初はけっこう様子見で前に出ていく回数とかも抑えてたりしてた。(中盤底でバランスを取るポジションの)アンカーだったし、だんだんプレー範囲を広げていこうという意識で、得点もCKからだったり取れ始めた。ミドルシュートで1点(移籍後初ゴール)取れて、『打て!』っていう雰囲気を自分で出せる(ようになった)。それも含めて1点目がミドルで取れたのが良かった。最終的に46試合あったんで、もうちょっとほしかったけど、アンカーで5点は正直、良かったかなと思う」
1月4日のハル戦で豪快なミドルシュートで移籍後初得点。クラブの年間最優秀ゴールに選ばれた。
「パスする気はなくて、気づいたら打ってて、顔を上げたらGKの頭上を越えて(ボールが)ゴールに入ってた。
加入当初から、ファルケ監督に得点を厳命されていたわけではないという。
「監督室に呼ばれたのはシーズンで1回だけ。シーズン中盤の時、俺が相手にマンツー(マン守備を)つけられるのが増えた時に『こうしよう、こうしてほしい』みたいな。全然『前に行け』とは言われない。基本はアンカーで真ん中にどっしりいて、リスク管理して、ボール保持してプレーしてくれ…と。
一方で、日々のチーム練習でも、田中のゴールに対する期待が表れていた。
「点を取ってから、やたら(監督が)俺に『点を取れ』と言ってくるんですよ。試合の前日にアップが終わった後、ロンド(ボール回し)とシュート練習で分かれるところがある。基本的に、最終ラインやサイドバック、ボランチの44番(MFグルエフ)もロンドなんですけど、俺だけは絶対にずっとシュート。俺がアンカーだろうが、ずっとシュート練習なんですよ。外したりしたら、『また外してるじゃん』みたいな。俺にだけは口うるさく言ってきた(笑)。英語ですらすら会話できるわけじゃないから、絡みたくて俺に言ってきた可能性はあるけど、俺にだけは言ってきた。
【中】に続く
◆田中 碧(たなか・あお)1998年9月10日、川崎市生まれ。26歳。さぎぬまSCから小3で川崎の下部組織に入団。2017年トップチーム昇格。19年Jリーグベストヤングプレーヤー賞(新人王)、20年ベストイレブン選出。21年6月にドイツ2部デュッセルドルフに移籍、24年8月からイングランド2部リーズ所属。21年東京五輪に出場。22年カタールW杯1次リーグ・スペイン戦で決勝点を挙げ、16強進出に貢献。代表通算32戦8得点。利き足は右。180センチ、75キロ。