昨年の全国高校男子駅伝で準優勝しながら指導者の交代を決めた学校側に反対して18人が福岡・大牟田から集団転校した鳥取城北が15日、横浜市の日体大横浜健志台キャンパス陸上競技場で行われた日体大学長距離競技会兼ニッタイダイ・チャレンジ・ゲームズ男子5000メートルに出場し、連日で自己ベスト記録が続出した。元々、鳥取城北に在籍していた相沢陽(2年)は第5組で気温30度の暑さの中、15分41秒32で走破。

自己ベスト記録を約38秒も更新した。「普段の練習の質、量ともにレベルが一気に上がりました。選手としてありがたいです」と相沢は激変した環境にも前向きに話した。現状、大牟田から集団転校してきた選手の方が実力が上だが、相沢は「秋の駅伝シーズンにはレギュラー(7人)に食い込めるように頑張ります」と強い意欲を示した。

 前日の同競技会1500メートルではエースの本田桜二郎(3年)が3分46秒86、準エースの村上遵世(3年)が3分48秒99で走破。この日の5000メートルでは第7組で本田、村上ともにチームメートのペースメーカーを務め、余裕を持って、それぞれ14分25秒77、14分27秒50でゴールした。第10組では竹ノ下鳳瞳(2年)が14分23秒38、宗像琢馬(3年)が14分26秒84とそれぞれ自己ベストの好記録でゴールした。強豪の大牟田から転校してきた選手たちがレベルの高い走りを見せた。

 今春、大牟田から転校してきた選手と、元々、鳥取城北に在籍していた選手では競技力に差があることは事実だが、互いに刺激し合って、共に成長を続けている。相沢は3月に大牟田から集団転校してくるという第一報を聞いた時の感想について「『鳥取城北に来るんだ』と思っただけです」と冷静に振り返る。大牟田のヘッドコーチから鳥取城北の監督に転職した赤池健監督は「鳥取の生徒は頑張る選手ばかりです。みんな、一生懸命についてきてくれています」と話す。

相沢は「赤池監督の動き作りの練習で走りがスムーズになりました。きょう、自己ベスト記録を出しましたけど、まだまだです」と旺盛な向上心を見せた。

 大牟田出身の宗像と、元々、鳥取城北で主将を務めていた早田慶哉(3年)がダブルキャプテンとしてチームを率いている。全国高校体育連盟の規定で転校後、6か月(水泳は1年)は同連盟の主催大会に出場できない。そのため、大牟田から転校した2、3年生は夏の全国高校総体、また、その予選に当たる県大会や中国大会は不参加。関東まで遠征し、今回の日体大長距離競技会などで実戦を積んでいる。その一方で、早田や1年生らは全国高校総体を目指して、県大会、中国大会に挑んでいる。

 今後、昨年の全国高校駅伝優勝の長野・佐久長聖など全国の強豪も参加する男鹿駅伝(6月28日、秋田・男鹿市)=7区間42・195キロ=にオープン参加する。そして、秋の駅伝シーズンから、転校した選手たちも正式に出場できる。

 昨年の鳥取県高校駅伝は米子松蔭が優勝し、鳥取城北は2位。大牟田からの集団転校によって、鳥取県、さらには全国の高校駅伝の勢力図が大きく変わった。「今年のチームは元々、鳥取城北にいた選手たちの頑張りが鍵を握っています」と赤池監督は言葉に力を込めて話す。

鳥取城北の新たな挑戦は、今季の高校駅伝界の大きな見所となっている。

 ◇大牟田から鳥取城北へ集団転校の経緯 関係者の話を総合すると、昨年11月の福岡県高校駅伝に優勝し、2年連続45回目の全国高校駅伝出場を決めた後、学校側は25年度から磯松大輔監督を招へいし、実質的な監督だった赤池健ヘッドコーチ(HC)をサポート役に降格する方針を決定。選手と保護者は反対し、撤回を求めたが、覆ることはなかった。その後、赤池氏は大牟田のHCを辞任し、鳥取城北の監督に転職することを決めた。各選手が保護者と話し合った結果、当時1、2年生(現2、3年生)19人のうち18人が赤池氏の指導を受けることを希望し、鳥取城北へ転校した。赤池氏の指導を希望して牟田への入学を予定していた新入生の大半も鳥取城北へ進路を変更した。

編集部おすすめ