◆自動車レース スーパーGT 第3戦(28日、マレーシア・セパン・インターナショナル・サーキット=1周5・524キロ)
約6年ぶりの海外開催で2013年以来、12年ぶりとなった28日の“セパン決戦”は55周で決勝レースが行われ、GT500クラスで、デロイト・トムスGRスープラ(笹原右京、ジュリアーノ・アレジ組)が巧みなピット作業で予選4位から逆転。今季初優勝を決めた。
マレーシア・セパンの鉛色の空の隙間から差し込む光が、王者を鮮やかに照らした。気温33度の東南アジア特有の熱風も、デロイトには心地よかったに違いない。予選4番手から高度のピット戦略で今季初優勝。昨年9月の第6戦(スポーツランドSUGO)以来のチェッカーにアレジと笹原、そしてクルム監督は喜びを爆発させた。
スタートを担当した29歳の笹原は耐えた。順位を守りながらタイヤに負担をかけない走りでアクセルを踏み続けた。19周目からドライバー交代のピットインが開始されると、20周目に2位走行のウェッズスポーツがピットイン。21周目には首位のARTAがピット。その他のマシンが続々とピットロードに入る中、耐え続けたデロイトは33周目に暫定首位でピットインした。
「スタート後はトップ集団の走りでしたが、タイヤを痛めないようにうまくマネジメントして、抜けそうなところは攻めていきました。
ピット作業も迅速な作業でタイヤ交換と給油を済ませ、チームの戦略通りに首位でピットアウトした。その後は25歳の剛腕アレジの出番だった。タイヤが温まるまで2番手のARTAを必死に抑え込んだ。タイヤがマッチすると、ジワジワとリードを広げ、最後は約19秒差をつけて走り切った。
「ピットを出た時は(ARTAが後ろに迫って)厳しいかなと思いました。でも、ギブアップしないで攻めました。優勝できてうれしい」とアレジも笑顔。興奮気味のクルム監督は「きょうはドライバーのレースでした。メカニックも100点、トヨタのエンジンには『ありがとう』と言いたい」と叫んでいた。
〇…富士の第4戦は初のスプリントレースが実施される。ドライバー交代、タイヤ交換、燃料補給といったピットストップが行われないレース。8月2日は予選とGT500クラス、GT300クラスの混合による35周の決勝。同3日は予選の後に2クラスが分かれて各50分の決勝を、前日とは違うドライバーで実施する。2日間で決勝3レースが行われることになる。スタート方式などについては協議中。
〇…12年ぶりのセパン開催では、GT300クラスに2台のワイルドカード車両(現地特別枠)が出走。結果は17位と19位だったが、611号車のEBMギガ911GT3はQ1(1回目の予選)でトップタイムをマークして存在感を示した。地元の関係者によると、来年のセパン開催ではGT500クラスにワイルドカードで参戦予定という。史上初のケースで、GTA(GTアソシエイション)の坂東正明代表も期待を寄せていた。
◆アップガレージAMGGT3ポール・トゥ・ウィン
ポールポジションのアップガレージは、スタート直後にグリーンブレイブに抜かれたものの、グリーンブレイブが26周目のピット作業でタイヤのナット(ネジ)が飛んでしまうトラブルに見舞われトップに再浮上。最後は37歳のベテラン・小林が後続を振り切って、予選1位からのポール・トゥ・ウィンを決めた。小林は前回、13年にセパンで開催されたレースもオートバックス・レーシング・チーム・アグリで優勝。12年ぶりの連勝で通算9勝目を挙げた。
「結果的にセパンで連勝、2戦連続のポール・トゥ・ウィンができたのもうれしいです。野村君が1周目に順位を下げてしまっても諦めずに食らいついてくれた。最後は苦しかったですけど、勝てて幸せです」と胸をなで下ろしていた。
初優勝の野村は「タイヤの温まりが厳しくて先行されてしまいましたが、なんとか耐えました。初めての優勝は本当にうれしいです」と笑顔をのぞかせた。
◆デロイト・トムス 「トムス」は1974年に設立され、日本のモータースポーツ界を支えてきた名門。スーパーGTには3連覇を目指すauとの2台体制。昨年、往年の名ドライバー、ミハエル・クルム氏(55)が監督に就任。