歌舞伎俳優・片岡仁左衛門(81)が17日、京都・北野天満宮を訪れた。東京・歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」(2~24日千秋楽)の「通し狂言 菅原伝授手習鑑」で当たり役の菅丞相(菅原道真)を5年ぶりに演じるため、その成功祈願が目的。

 同所は道真をまつる全国1万2000の天満宮・天神社の総本社。京都で生まれ育った仁左衛門は、何度も訪れている場所だが、この役での成功祈願は福岡・太宰府天満宮が多かったため、意外にも初めて。「ここに来ると温かみを感じ、どこか仲間に会えるような気持ちになる」と感慨深げ。当たり役の菅丞相は「筆法伝授」が6回目、「道明寺」が7回目。「ありがたい。できることに感謝したい。演技をする、という意識が残っているようではいけない」と究極の自然体を追い求める。

 この役で伝説をつくった祖父と父(11、13代目仁左衛門)にならい、今回もけいこが始まれば、千秋楽まで好物の牛肉を断つ。牛が天神さまの使いで道真が丑年生まれというのが、理由だ。境内にも多くの牛が鎮座する。動物性たんぱく質は「他にいろいろありますよ、豚とか。いいサプリも」と栄養面での心配はなさそう。

 なお公演はAプロ、Bプロとあり、仁左衛門の出演は昼の部Aプロで、武部源蔵を松本幸四郎(52)が演じる。Bプロの菅丞相は幸四郎が演じ、源蔵を市川染五郎(20)の配役。

 「秀山祭」は名優、初代中村吉右衛門の生誕120年を記念し、その功績を顕彰し、芸の継承を目的に2006年、2代目吉右衛門が中心となり始まった。初代にゆかりある演目が選ばれる。

 今回の「菅原伝授手習鑑」の通しでは「加茂堤」「筆法伝授」「道明寺」(以上昼の部)、「車引」「賀の祝」「寺子屋」(以上夜の部)が上演。菅丞相が最初に登場するのが「筆法伝授」。現在、有名な演目として知られるが、長らく上演されなかったものを約60年ぶりの復活(1943年)に動いたのが初代吉右衛門だったといわれる。

編集部おすすめ