◆男子プロゴルフツアー ISPSハンダ夏の決戦トーナメント 最終日(24日、北海道・ブルックスCC=7286ヤード、パー72)

 3打差8位で出た米ツアー1勝の小平智(35)=Admiral=が1イーグル、7バーディー、ボギーなしの63をマークし通算24アンダーで逆転し、2018年日本シリーズJTカップ以来7年ぶりの日本ツアー8勝目を天国の父に届けた。今季最高4260万円の優勝賞金を獲得。

7月の米国合宿で助言をくれた松山英樹(33)=LEXUS=への感謝の言葉とともに、米ツアー再挑戦を明言した。

 プレーオフに備えて練習グリーンにいた小平の元へ、岩田寛が猛スピードで駆けてきた。優勝が決まった直後、熱い抱擁を交わしながら、大好きな先輩がボソッと耳元で言った。「俺が泣きそう」。小平はこらえた。「その言葉で僕が泣きそうになった。今までで一番うれしい優勝」。支えてくれた人たちへの恩返しになった。

 折り返しで見たリーダーボードのトップに、岩田の名前があった。「仲良くさせてもらっているのでやる気が入った。そこでスイッチが入った」。12番から4連続バーディーで首位を捉えた。

17番パー5。残り265ヤードを3ウッドでピン手前3メートルに2オンに成功し、イーグルを奪い抜け出した。

 2018年RBCヘリテージでの優勝を機に米ツアーに本格参戦した実力者は昨夏、日本に主戦場を戻した。賞金ランクは53位でシード確保がやっと。今季も予選落ちが続いた。7月初めから1か月半、低迷打破へ海を渡った。フロリダの自宅でゴルフ漬けの日々を過ごし、松山と3日間練習をともにした。食事をしながらゴルフを語り合った。スイングのヒントをもらい、パッティングを褒めてくれた。「自分は下手だってずっと言われていたので、自信になった。英樹に早く報告したい」と目尻を下げた。

 「アメリカは捨てきれない。

今年の予選会を受けにいきます」と再挑戦を明言した。先月、松山と約束した。「絶対に戻ってくるから待っていて」。幼い頃から憧れた米ツアーで、再び輝きたい。「一番刺激を与えてくれているのは日本人である英樹。ずっとトップで戦えているっていうことは本当にすごい」。実際に身を置いたものでしか分かり合えないものがある。

 23年1月にコーチでもあった父・健一さんを亡くした。「父とコーチがいっぺんにいなくなった。テンションが上がらなかった」と苦悩の時期があったことを明かした。周囲の励ましに触れ、母・裕子さんの優しさを感じながら、復活への道のりを歩んできた。「父は僕のなかで生きている。

近くにいると思う。喜んでくれているんじゃないかな」。小平の顔に、穏やかで凜(りん)とした笑みが浮かんだ。(高木 恵)

 ◆小平の米ツアーへの道 ダンロップフェニックス終了後の11月25日時点の日本ツアー賞金ランク1位になれば、最終予選会(12月11~14日、フロリダ州)から出場できる。2次は5会場で12月2~5日に行われる。最終予選会5位までに米ツアー、40位までに下部ツアーの来季出場資格が付与される。金谷拓実が昨年3位で突破し、今季米ツアーに参戦している。小平は今回の優勝で賞金ランク5位に浮上した。

 ◆小平 智(こだいら・さとし)1989年9月11日、東京・三鷹市生まれ。35歳。10歳からゴルフを始め、駒場学園高から日大へ進学。2年で中退して2010年にプロ転向。

13年の日本ツアー選手権で初優勝し、15年の日本オープン、18年の日本シリーズJTカップを制してメジャー3冠を達成。日本ツアー通算7勝。18年RBCヘリテージで日本勢5人目の米ツアー制覇を達成した。24年7月に日本に復帰。172センチ、70キロ。

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