J1町田は16日にアジア・チャンピオンズリーグエリート(ACLE)の初戦となるFCソウル戦に臨む。町田の経営管理部兼運営部の古屋卓哉部長がスポーツ報知の取材に応じ、ACLEへ向けての準備や初挑戦ならではの苦労を語った。

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 8戦のうち4試合がアウェーとなるACLE1次リーグ。町田はジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア・9月30日)、上海海港(中国・10月21日)、江原(韓国・11月25日)、上海申花(中国・26年2月10日)との試合を敵地で戦う。古屋氏が入念に確認するポイントとは―。

 「スタジアム、練習場、ホテル、あとは選手たちの食事のために日本の食材が置いてあるスーパーがどこにあるか、などを視察しに行きます。基本的には向こうから推薦されるホテルがありますし、あとは旅行会社さんの方にもおすすめを聞きながら決めていく。選手が1番ストレス抱えないホテルを選んでいます。常に他のクラブと連絡を取り合って、情報を集めていますね。今年一緒に出るチーム(神戸、広島)とは、密に連絡をとってみんなで情報を共有しています」

 異国で戦う以上、トラブルはつきもの。過去のACL出場チームの経験をもとに、対策も練っている。

 「例えば去年は韓国の浦項に川崎さんが行っていましたけど、浦項は(グラウンドが)カッチコチだったと聞きました。だから、(今回も)それは全然ありえます。僕たちがACLに出る前から、『なんかこういうトラブルがあったらしいよ』とは、常日頃から業界の中で聞く。

例えば、チケットをちゃんと用意しているのに、ビジターが当日にしかチケットをくれなくて、当日ゲートの前でサポーターに配ったというのもよく聞く話。そこらへんは起こり得るのかなとは思っています。多分、僕たちがどれだけ準備しても、海外の人たちの感覚とは違う。だから、当たり前にチケットを貰えると思っていたら全然くれない、みたいなことも多分あるんだろうなと思います」

 ホームでも調整が必要になる。町田は本拠地として町田GIONスタジアムを使用。2021年までに完了したバックスタンドの増設により、J1基準(1万5000人収容)を満たす1万5320人の収容人数を誇る。しかし大会の規定により、背もたれのない席は使用できず。そのためゴール裏とメインスタンドの一部は使えず、「6000人ちょっと」の座席しか試合当日には稼働できない。

 「普段ゴール裏で使っているところは基本的に使えないので、(ACLEでは)バックスタンドの3階になります。(同様にホームのゴール裏に背もたれがない)レイソルさんも(ACLでは)使っていないと聞きました。インスペクションというのがあって、スタジアムにAFCの人が来るんですよ。そこで、『ここはいい。

ここはダメ』みたいに判断される。僕たちのゴール裏は、『背もたれがないからダメだね』という判断でした」

 町田は今回がACL初出場。何もかもが初体験だ。古屋さんも昨年4月までJ1福岡で1年間社長を務めクラブ経営に関わったが、ACLは初体験だ。だからこそ、様々な準備と対策を施しても「ゴールが見えない。何が正しいか分からない」と初出場ならではの苦悩を語る。

 「例えばスタジアムの会場設営で、ルールにはこう書いてあるけど、みたいなこともあるかもしれない。日本のスタジアム基準からすると、AFCの基準はものすごい厳しい。だから、『実際はこう書いてあるけど、ここまでやれればオッケーらしいよ』みたいな情報もあるんですよ。完璧には絶対にそろえられない。でも、本当にそれで行けるか分かるのは前日。前日にマッチコミッショナーとのミーティングがあるんですが、そこで全部回って確認する。

前日の段階で『いや、全然ダメだね』と言われてしまう可能性も、もちろんある。その場合罰金とかになってくるので怖さがあります」

 町田はクラブビジョンとして「町田を世界へ」を掲げる。今回のACLE出場はその第一歩。監督、コーチ、選手だけでなく、クラブのスタッフも意識を高めている。

 「町田をビッククラブにしなきゃいけないと思っています。そのためにはACLに出ないといけないですし、勝たなければいけない。そこに直接携われているのは楽しさも感じますし、やりがいも感じます」

 裏方の支えも原動力に、まずは初戦のFCソウル戦で白星をつかみ、町田の実力を示す。(浅岡 諒祐)

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