米メジャーリーグサッカー(MLS)のLAギャラクシーでプレーするDF吉田麻也(37)が、スポーツ報知の単独取材に応じ、22年カタールW杯を最後に招集外となっている日本代表への思いなどを明かした。来年、北中米W杯が行われる米国で3季目を戦う前代表キャプテンは、9月に米国内で行われた森保ジャパンとメキシコ、米国との親善試合もチェックし、約8か月後に開幕する本大会出場への意欲も見せた。
真っ青なロサンゼルスの空の下で、吉田は日本代表に思いをはせた。22年カタールW杯で日本を16強に導いた偉大なキャプテンは、PK戦で敗れたクロアチア戦後、代表には呼ばれていない。それでも、青いユニホームへの思いは、途切れてはいない。LAギャラクシーの練習後、階段に腰掛けた吉田は、リラックスした表情で話し始めた。
「(9月の日本)代表戦から流れて、(ロサンゼルスに)取材に来る人(日本人記者)がいるんじゃないかと思っていましたよ(笑)。(米国遠征は)かなりいいテストになったんじゃないですか。日本代表の試合? 見ていますよ。めっちゃ。日本のトップだから、そこを目指している選手は全員見るべきでしょ。例えば服を作っている人は、一流の服を触らなければ、本当にいいものはわからないだろうし。トップを見て、トップを目指さないと」
カタールW杯後の23年8月、欧州から米国へとプレーの場を移した吉田。昨季はキャプテンとしてチームをMLS杯優勝に導くなど、負傷以外では常にレギュラーとして出場し続けている。
「(日本が引き分けた)メキシコは、いつもより調子悪かったですよ。後ろ(GK、DF)が全然(パスを)つなげなかった。メキシコは普段、もっとつなぐ。僕が楽しみにしていたのは、日本がハイプレスをかいくぐられた時にどうするのか。でも、(メキシコはロングボールを)蹴ってしまった。見たいのはそこじゃないんだよな、と。本来はもっとボランチを使われて、プレスをかいくぐられて、そこから(日本が)どうするかを見たかった。これが本当のメキシコだとは思わない方がいい」
米国戦(0●2)については、日本の課題を的確に指摘した。
「逆に米国が意外につないできてね。(日本は)1人目がプレスに行って、次でファウルになる回数が多かった。
森保ジャパンのセンターバック(CB)陣に負傷者が複数人出ている状況。その中で常時、クラブで出場を続けている吉田の存在は、いざというときのオプションになりうる。ただ、今季のLAギャラクシーは西地区の最下位に沈んでおり、吉田は自身の現状も冷静に受け止めていた。
「どうしてもCBなので、チーム(ギャラクシー)の成績にパフォーマンスが左右される。FWだったら降格しても1人だけ20点取りました、とかいるじゃないですか。CBでそれはできない。去年に比べて自分のパフォーマンスもまだまだ。相手から研究されている点も多い。まずはチームを好転させないと、その先を話す資格もないな、っていう気持ちです」
米国の環境に適応している吉田の経験値は貴重だ。
「3時間はきつい。僕らも結構、2時間はあります。慣れましたけど、痛いほど気持ちはわかります。自分の中で試行錯誤して、時差を感じない方法、気候にアジャストする方法、飛行機の中の過ごし方、色々工夫するしかない。(ギャラクシーでは)皆にドン引きされていますけどね。マットレスとか、色んな器具を持ち込んで。サプリメントも。あと(時差の)アジャストは1日ではできないので、その前からちょっとずつ合わせていく。基本的に時差って1日1時間ずつ戻せる、と言われているので。3日あれば3時間は戻せる。今回、ピッチ内外で色々なことを経験し、W杯がぐっと近づいたんじゃないかな」
ギャラクシーでは9月も全試合に先発出場した吉田。
「代表は引退したのか? ってよく聞かれるんですよ。そうじゃないです。W杯に出たくない人なんていないでしょ。でも、常に競争がありますからね。その競争に打ち勝った選手だけがW杯に行ける。でも、競争の中に入れなかったらどうしようもない。僕は今、自分のやるべきことを頑張りますよ」
〇…FIFAランク19位の日本代表は10日に同37位のパラグアイとパナスタで、14日に同6位のブラジル戦と国立で親善試合を行う。メンバー発表は2日に実施される。森保一監督(57)はメキシコに引き分け、米国に敗れた9月の米国遠征を経て「個人のパフォーマンスとして力を発揮できた選手、できなかった選手がいると思いますので、入れ替えはしていきたい」と語っており、人選に注目が集まる。
◆森保ジャパンの米国遠征
▽9月6日・メキシコ戦(0△0) オークランドで行われた一戦は引き分け。
▽9月10日・米国戦(0●2) コロンバスでFIFAランク15位と対戦し、0―2と完敗した。オークランドから3時間の時差、中2日という条件の中、メキシコ戦から先発全員を入れ替え。しかし、連係がかみ合わず、攻守に課題を露呈した一戦となった。
◆2026年北中米W杯
▽会期 6月11日に開幕し、7月19日に決勝の予定。過去最多48チームが参加。米国、カナダ、メキシコの3か国、16都市で開催。会場の内訳は米国11、カナダ2、メキシコ3。時差を伴う長距離移動や気候の変化が生じる場合がある。 ▽1次リーグ(L) 12グループを原則3地域(西部、中央、東部)に分け、地域間の移動はなし。
▽本大会抽選 12月5日(日本時間6日)に首都ワシントンの文化施設ケネディ・センターで実施。
競争に入れる価値がある ◆取材後記
吉田を直接取材したのは、22年12月のカタールW杯以来だった。本人は代表復帰について「呼ばれる可能性をまず考えましょうよ」と笑っていた。しかし、言葉の端々には、日本代表への思いがにじんだ。さらに、代表チーム密着のYouTube「Team Cam」にも目を通していると聞くと、再びあの場所に戻る準備だとしか思えなかった。
米国遠征を取材し、時差や移動など米国独特のハードルが、選手たちに与える影響は大きいと実感した。その環境下で、3季に渡ってプレーする吉田の持つ経験は大きい。冨安や伊藤らCBの主力が長期離脱する中、吉田がいつでも代表に戻れる状態で控えている事実は、日本代表が積み重ねてきた確かな成長の証しでもある。
経験があるからといって、日本代表は務まる場所ではない。ただカタールで彼が見せたリーダーシップ、そして鬼気迫るプレーを、今も表現できる状態にあるのなら―。W杯を知る熟練のセンターバックを、再び競争の舞台に戻す価値はあるはずだ。(サッカー日本代表担当・金川 誉)