第50回札幌マラソン(札幌市、報知新聞社など主催)は5日、札幌・真駒内セキスイハイムスタジアム発着コースなどで開催される。大会には、道内外から1万4948人がエントリー。

1976年の第1回大会から出場する細川薫さん(86)、稲見昇さん(82)、高橋雄一さん(78)の3人は、50回連続でスタートラインに立つ。

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  第1回大会での悔しさから、細川さんは走ることにのめり込んでいった。学生時代に陸上経験はなく、興味本位で出た札幌マラソンデビュー戦は86位。「全然及ばなくて。それから入賞したくて練習した」。午前3時半に起き、20キロ走ってから仕事に向かった。雨でも雪でも長靴を履いて走り、正月も休まず、38キロ走った日もある。「50歳くらいの時、ラストで目の前の選手の背中がすぐそこにあったんだけど最後、ターボがかからなくて2位。優勝はできなかったね」。これまでの思い出をそう懐かしんだ。

 「競争が好きだった」と走り続けてきたが、「入賞に越したことはないけど、大会の雰囲気が好き」と目的も変わっていった。昨年まで5キロに出場していたが「体力的にもう辞めようと思っていた」。

今年、「だれでも1キロ」の存在を知り、出場継続を決めた。毎年、3人の子どもと一緒に走った後、自宅で食事をするのが恒例。「それが楽しみでね」。家族だんらんの時も心待ちにし、細川さんが50回大会に臨む。

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  ハーフ男子70歳以上に出場する稲見さんは、完走が目標だ。「札幌マラソンのハーフは今年が最後。タイムが落ちているので、(5、8、10キロの)制限時間を切れるかが心配。なんとか通過して走り切りたい」と意気込んだ。

 八雲町出身。明大の選手として箱根駅伝に出場した兄・進さんの影響で陸上を始め、全道各地で行われる大会に臨んできた。「70歳後半になったらなんぼ頑張っても体力が維持できない」と言いながらも、現在は1か月で約150キロを走り、1日100回の腹筋、背筋も隔日で実施。衰えを感じる体にむちを打って、コンディションを整えてきた。

 周囲からは「なぜ走り続けるのか」と聞かれることも多いが、「走ることは趣味じゃない。習慣。お腹が空いたらご飯を食べるようなもんですよ」と笑う。好きな言葉は「継続は力なり」。己と戦う50回目の札幌マラソンが始まる。

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 10キロ男子70歳以上に出場する高橋さんは、雨の日も風の日も夕方に5キロ走るのがルーチンだ。風邪を引いたときも「走って汗を流して治す」というほど、毎日の練習を欠かさない。

 ニセコ町出身で、小学4年から地元の大会に参加。いつしか走ることが生活に欠かせなくなり、年齢を重ねてからは健康管理も徹底してきた。40歳の時に出場した大会でゴール前で競り負けたことがきっかけで、それまで1日1箱ほど吸っていたタバコを禁煙。外食やコンビニ弁当なども控え、食事はたんぱく質などを多めに摂取し栄養面を考えて自炊してきた。

 これまで道内各地で顔を合わせてきた同世代も“引退”するランナーが増えてきた。

高橋さんも「ちょっときつい練習したらすぐ体が痛くなる」と、体の衰えを年々実感するという。それでも、走ることが生活の一部。節目となる50回目のレースは、一歩一歩、自分のペースで札幌の街を走り抜けていく。

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