巨人が6日、11日から始まるDeNAとのクライマックスシリーズ(CS)第1ステージ(S)に向けて、社会人のSUBARUと練習試合(東京D)を行った。リチャード内野手(26)が「5番・一塁」で出場し、初回1死満塁で左翼線へ先制の2点二塁打を放つなど2安打2打点。

昨年のCS最終Sでは4番・岡本が勝負を避けられたことで、打線が分断して敗退。課題となっていた主砲の後、5、6番を任される可能性が高いリチャードが存在感を示した。

 リチャードは迷うことなくスイングを仕掛けた。初回1死一、三塁で4番の岡本が四球を選び、満塁へと好機が拡大して打席へ。カウント1―1からSUBARUの右腕・小沢の投じた低めの変化球に反応した。泳ぎながら左手一本で左翼線に運んだ。先制の2点二塁打。岡本が四球後の得点機というCSでも想定される展開で、5番が勝負強さを発揮した。「打てて良かったです」。簡潔な言葉に安どがにじむことはなかった。

 主砲の後ろの打者陣が“下克上日本一”へのカギを握る。DeNAに敗れた昨年のCSは6試合で計9得点と打線が沈黙した。

岡本が初回から歩かされるなど、計4つの申告敬遠と勝負を避けられ続け、大城卓、坂本、ヘルナンデスが務めた5番打者は計22打数無安打と不発。打線が分断し、機能不全に陥った。

 今回のCSでも同様に4番・岡本には四球OKの攻めが想定される。その意味でチャンスで多く回る5、6番の役割は大きい。シーズンのラスト3試合で5番で先発出場していたリチャードの5番起用の可能性について問われた阿部監督は「もちろんあるかもしれないし、そこは考えようかな」と説明。岸田が5、6番のいずれかで出場する可能性が高まっている状況で、リチャードの充実ぶりは頼もしい。得点機での打席が増えることが予想される中、「背伸びできないので、やれることやってバット振るだけです」と、平常心を貫き勝負する。

 苦い経験からはい上がってきた。ソフトバンク時代の22年10月13日。オリックスとのCS最終Sの第2戦(京セラD)で、「7番・一塁」で先発に抜てきされるも2打数無安打、2三振で途中交代した。同戦以降は出場なし。あの時の悔しさは忘れていない。

 3年前とは違う姿が今はある。今季、5月にトレードで加入すると夏場以降にレギュラーに定着。77試合に出場して打率2割1分1厘、11本塁打、39打点の成績を残した。確実性と追い込まれてからの対応力が向上し、後半戦に挙げた打点は32でチームトップ。「(CSでも)シーズンと変わらずに自分のできることをやりたい」。そう冷静に語れるのは積み上げてきたものがあるからだ。

 7回2死では中前安打を放ち、2安打2打点をマーク。11日から始まるCS第1Sに向けて、順調な仕上がりを示した。「気負うことなく、『打てる』と思ったら振っていく」。岡本の後ろには成長著しい男がいる。リチャードが逆襲へのキーマンになる。(宮内 孝太)

 【記録メモ】

 球宴後の後半戦で巨人打者の打点上位は、〈1〉リチャード32、〈2〉岸田26、〈3〉岡本とキャベッジ24、〈5〉中山23点。

後半戦はリチャードがチームの打点王だ。

 リチャードのDeNA戦は14試合で打率.190ながら、3本塁打は岡本の7本に次いでキャベッジと並ぶチーム2位タイ。9打点も岡本の17点に次ぎ、泉口と並んで2番目になる。

 2位争いが激しくなったシーズン終盤の9月には、横浜での4試合に15打数5安打の打率.333、1本塁打に3打点。このカードで好成績だった。

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