◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 約1か月前の9月6日、メジャーリーグで大騒動が起きた。「大谷翔平がボルティモアで緊急二刀流出場、ピンチで160キロ超連発」で日本のMLBファンが盛り上がった日だ。

場所は同じ東海岸のはるか南、マイアミ。マーリンズ―フィリーズ戦で6回にフ軍のベーダーが左翼へ15号を放った。ボールを拾いに行った父が席に戻り、子に渡した。よくある光景だ。その直後、猛烈な勢いで父親にくってかかる女性がいた。公式のリプレー動画でも、その様子が映り込んでいる。

 現地報道によると「そのボールは自分のものだ」と女性は強硬に主張。息子の前でトラブルを避けたい父親は、最終的にそのボールを渡した。子供がショックを受けないように、敵軍のマーリンズ球団スタッフが即座にグッズ詰め合わせを提供。試合後にはベーダー自身が一家をクラブハウス前に招き、直筆サイン入りバットなどを贈呈した。

 SNS時代の現代社会では、ここからすごい勢いで“犯人”探しが始まった。横柄で自己中心的な中年女性をやゆするネットスラング「Karen(カレン)」を用いて「フィリーズ・カレン」と呼ばれ、悪い意味で「全米」で時の人となった。

よくあるほほ笑ましい場面が一瞬でネット時代の怪談に変わった。

 女性が特定されたという情報はない。特徴的な金髪ボブのヘアスタイルとパーカの上にフィリーズのユニホームを羽織った姿はすでにミーム化(模倣、改変され拡散していくこと)しており「今年のハロウィーンはこれで決まりだ」という書き込みもあった。それはそれで見てみたいものだ。(MLB担当・西村 國継)

 ◆西村 國継(にしむら・くにつぐ) 1997年入社。現地で担当していたマリナーズが地区優勝して意外にうれしい。

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