◆学生3大駅伝開幕戦  出雲駅伝(13日、島根・出雲市出雲大社正面鳥居前スタート、出雲ドーム前ゴール=6区間45・1キロ)

 昨季の大学駅伝2冠の国学院大が2年連続3度目の優勝を果たした。アンカーを務めた主将の上原琉翔(4年)が昨年の全日本大学駅伝に続き、優勝のゴールテープを切った。

 昨季の箱根駅伝王者の青学大はまさかの大苦戦。4区終了時点で関東勢最下位の11位と低迷した。5区の塩出翔太(4年)と6区のエース黒田朝日(4年)が意地を見せたが、1~4区は上位争いから大きく遅れた。

 国学院大が「駅伝力」を見せつけ、堅実にタスキをつなぎ続けた。1区でエースの青木瑠郁(4年)がトップの中大と14秒差の5位とまずまずのスタートを切ると、2区で3大駅伝初出場の尾熊迅斗(2年)も5位をキープした。

 勝利を引き寄せたのは、エース区間の3区で区間2位と力走した野中恒亨(3年)だった。5位から3人抜きで2位に浮上。区間賞は城西大のヴィクター・キムタイ(4年)に譲ったが、5000メートルの自己ベスト記録(12分48秒20)と1万メートル自己ベスト記録(26分57秒30)がいずれも日本記録を超える米国のアイビーリーグ選抜のグラハム・ブランクス(ハーバード大)、5000メートル(13分00秒17)、1万メートル(27分06秒88)、ハーフマラソン(59分32秒)の3種目で日本学生記録を持つ東京国際大のリチャード・エティーリ(3年)ら強豪に競り勝った。

 4区で、当日変更で投入された辻原輝(3年)が区間新記録の快走で首位に浮上。2019年に青学大の神林勇太がマークした17分24秒の区間記録を4秒更新した。

 5区はマラソン日本人学生歴代8位(2時間8分50秒)の高山豪起(4年)が安定感あふれる走りで首位をがっちりとキープした。

 アンカーの上原は、昨年の伊勢路と同じく、出雲路でも優勝への花道を走り、仲間が待つ出雲ドーム前に駆け込んだ。

 昨季、出雲駅伝と全日本大学駅伝を快勝した国学院大は、唯一、逃した箱根路制覇を今季の一番の目標に掲げる。

 今季のチームスローガンは「はばちかす~想(おも)いの継承、そして革新へ~」。上原主将は「『はばちかす』は僕の出身の沖縄の方言で『名をとどろかせる』などの意味があります」と説明。対義の意味を持つ「継承」と「革新」についても上原は熱く語った。

 「昨季は出雲と全日本は勝つことができました。手応えがある中で箱根に臨みましたが、それでも勝てませんでした。箱根で勝つという強い思いを継承しながら、勝つために改善すべき点があれば改善しようということです。例えば、朝練習の補強トレーニングは昨年よりも時間をかけて、より丁寧に行うようになりました。その結果、故障者がほとんどいなくなり、チームが底上げされました」

 昨季までの大エース平林清澄(現ロジスティード)、5000メートル(13分34秒85)とハーフマラソン(1時間43秒)で国学院大記録を持っていた山本歩夢(現旭化成)が卒業。2人が抜けた穴は大きいが、チーム全体の成長と勢いで埋まりつつある。

 今年2月に上原がハーフマラソンを1時間30秒、6月に青木が5000メートルを13分30秒42で走り、山本の国学院大記録を更新した。平林が3年連続で担っていた箱根駅伝2区には青木や高山が力強く名乗りを挙げる。

 夏合宿ではチーム全員が泥臭く走り込んだ。前田康弘監督(47)は「昨年以上の練習が積めました」と手応えを明かす。

 2019年、出雲駅伝で学生3大駅伝初優勝を果たした以降、3大駅伝の平均順位は3・89位。常に上位争いに加わり、年々、国学院大の存在感は増している。出雲路を制して、全日本大学駅伝でも2年連続2度目の優勝を狙う。そして、本当の勝負は箱根路。「今季こそ箱根駅伝で勝ちます」と主将の上原はチーム全員の思いを代弁する。

 勝った喜びと負けた悔しさ。昨季、その両方を知った国学院大は、また、ひとつ上のレベルのチームに成長して、2025年度の駅伝シーズンに挑んでいる。

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