◆米大リーグ ナ・リーグ優勝決定シリーズ第2戦 ブルワーズ1―5ドジャース(14日、米ウィスコンシン州ミルウォーキー=アメリカンファミリーフィールド)

 ドジャース・山本由伸投手(27)が14日(日本時間15日)、ナ・リーグ優勝決定シリーズ第2戦の敵地・ブルワーズ戦に先発し、9回3安打1失点。ポストシーズン(PS)日本人初、メジャー移籍後レギュラーシーズンを含めて55試合目で自身初完投勝利を挙げた。

ドジャースは敵地で2連勝発進。1日の休養日を挟み、16日(同17日)に本拠地で第3戦を迎える。

 勝利の瞬間をマウンドで迎えると、ようやく山本の表情が緩んだ。9回を111球、3安打1失点でメジャー自身初完投。8回を終えて97球。ロバーツ監督は迷いなく最終回のマウンドに右腕を送った。「信頼してもらって、結果で応えられてよかった。達成感がすごくありました」。日本人メジャーリーガーのPS初完投はメジャー全体でも、17年10月14日のバーランダー(当時アストロズ)以来、8年ぶりの快挙だった。

 初球を投げ終えた後に、誰がこの未来を想像しただろうか。初回、先頭のチョウリオに投じた96・9マイル(約155・9キロ)直球を右翼席に運ばれた。前回登板の8日、地区S第3戦フィリーズ戦は5回途中3失点KO、ブ軍戦は7月7日に1回持たず5失点KOだった悪夢もよぎったが冷静だった。

「すごい悔しかったですけど、とにかく切り替えて次のバッターに向かって投げた。ソロでしたし、そんなにメンタルに来ることなく投げることができた」と、リズムに乗った。

 直後の2回に打線が奮起して逆転。以降5回までは毎回走者を許したが、二塁すら踏ませず、5回2死から14者連続アウト。最速97・6マイル(約157・1キロ)の直球にスプリット、カーブなどを効果的に使ってブ軍打線を翻弄(ほんろう)。「1イニングずつ集中した」という言葉通り、リードを守り抜いた。9回こそベシアが準備していたが、8回まではブルペンでは誰一人として投球練習すらしておらず救援陣も休ませた。

 前日13日は“スネル先生”が8回1安打無失点。サイ・ヤング賞2度の左腕は、山本の登板後の反省会にたびたび参加。打者の印象などさまざまな助言を受けていた。山本は「たくさん学ばせてもらっている。すごく心強い存在で、大きな存在」と感謝する。

右、左こそ違えどスネルの快投は「自分も行けるぞという気持ちになった」と、自信につながった。

 チームはレギュラーシーズンで6戦全敗だったブ軍に敵地で2連勝。7試合制のPSで、2勝0敗となったチームは、過去93チーム中78チームが勝ち上がり、突破率は83・9%だ。チームは試合終了約1時間後に球場をバスで空港へ出発。ロサンゼルスへと向かった。山本はインタビューを受け、治療を行い、Tシャツ姿で会見を終えたのは、バス出発予定時間の10分前だった。「まだ手も洗ってない…」と苦笑いもうれしそう。帰りのフライトではスネルの隣で笑顔を見せた由伸。前回登板後に金色に近かった明るい髪を黒めに染めて心機一転。髪色とは対照的に、表情はどこまでも明るかった。(安藤 宏太)

 ドジャース・カーショー「本当にアメージングだ。信じられないほどよく、試合を通してそれを維持した。

本当にシンプルで美しい。だからチャーリー(息子)に彼を見て学ぶように言っている」

 ドジャース・ロバーツ監督「本物の自信を感じる。それが全てだと思う。真の自信を持っている。(9回続投の判断は)難しくはなかった。9回を任せることに大きな自信を持てた」

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