◆米大リーグ ワールドシリーズ第2戦 ブルージェイズ1―5ドジャース(25日、カナダ・オンタリオ州トロント=ロジャーズセンター)

 ドジャース・山本由伸投手(27)が25日(日本時間26日)のワールドシリーズ(WS)第2戦で記録ずくめの白星を挙げた。敵地でブルージェイズを相手に9回4安打1失点、8奪三振で2登板連続の完投勝利。

ポストシーズン(PS)の2戦連続完投勝利は01年の通算216勝右腕のC・シリング(Dバックス)が達成して以来、24年ぶりの快挙となった。「1番・DH」でフル出場した大谷翔平投手(31)は8回にダメ押し点につながる右前安打を放ち、5試合連続安打。1勝1敗のタイに戻し、本拠ロサンゼルスへ帰還する。

 静まりかえる敵地のど真ん中で、山本がホッとしたような笑みを浮かべながら捕手・スミスとハグを交わした。9回2死、バーショを96・9マイル(約155・9キロ)の直球で押し込んで力ない三飛に仕留め1勝1敗のタイとした。「チームの戦力になれたという実感がすごくするので、そこがすごくうれしい」。初戦を11失点で落とし、重圧がかかる中で9回105球4安打1失点。PSでの2試合連続完投は01年のシリング(Dバックス)以来24年ぶりで、ド軍投手のWS完投は通算204勝右腕のO・ハーシュハイザー以来37年ぶり。快投でレジェンドに肩を並べた。

 冷静だった。初回、いきなり2者連続安打を浴びて無死一、三塁の大ピンチ。しかし、ゲレロから空振り三振を奪うなど無失点で切り抜けると、初回先頭弾から1失点完投だった14日(日本時間15日)のブルワーズ戦と同じくリズムに乗った。

3回には犠飛で1点を失ったが、「先頭のデッドボールからだったので、すごく悔しかったですけど、まだ同点だったので」。3回2死からは球団のPS記録となる圧巻の20者連続アウト。最速97・9マイル(約157・6キロ)の直球にスプリット、カーブを織り交ぜ、30球団トップ、チーム打率2割6分5厘の強力打線を手玉に取った。ロバーツ監督が「素晴らしかった。本当に特別だ」と脱帽し、山本も「素晴らしかった」と自賛する日本人初のWS完投で今季PS3勝目。通算5勝とし、米2年目にして田中将、ダルビッシュの日本人最多記録に並んだ。

 米2年目の今季のレギュラーシーズンはチーム最多12勝。故障者続出の中でローテを守り抜いたが、1年目の昨季はさまざまなシーンで、戸惑うこともあった。メジャーはチーム数が多いため、同一の敵地への遠征はPSを除けば多くても年2、3カードほど。遠征では敵軍関係者からサインの要請がたびたび来る。昨季はほぼすべての要望に応じ、時には数百枚単位を書いて、数時間かかることもあった。

 そんな由伸を見かねたベッツがそっと助言をくれた。

「練習や調整に影響するなら断ってもいいんだよ」。可能な限りのサービスは続けるが、他の主力選手も取捨選択していることを知り、気が楽になった。メジャー2年目で「慣れてきた気もするけど…」と言いながら「本当にただ野球しかしていない」。一流選手に助けられながら、メジャー生活に順応してきている。

 今後は中5日で再び敵地に戻る第6戦の先発に備えることが濃厚。さらに重圧のかかる試合となる。「何とかここを取って1勝1敗でロサンゼルスに戻れたら、もっといい流れになると思ってたので」。チームに流れを呼び戻し、自身も無双モードに入った。今季登板が残りあと1試合なことが惜しいほどだ。(安藤 宏太)

 ◆由伸に聞く

 ―試合を振り返って。

 「素晴らしかったと思う。初回ちょっと走者が出たり、その後デッドボールから失点したりとかあったんですけど、冷静に投げられた」

 ―初回にピンチを迎えたが、3回(途中)からは20者連続アウト。

 「リラックスして初回に入るということを心掛けていたんですけど、やっぱりワールドシリーズなだけあってちょっと力みがあったので、しっかり冷静に調整してテンポを上げていけることができました」

 ―9回まで投げるイメージは。

 「とにかく1イニングに集中して、結果8回が終わったときにまだ球数も少し余裕があったので、いけるかなと思いました」

 ―カーブを効果的に使えた。

 「いいところで使っていけましたし、その分スプリットもカーブが効いた分、スプリットも有効に使えましたし、ピッチングの幅を広げられたかなと思います」

 ―試合中にベンチでノートに書いていることは。

 「いつもずっと全部の試合でやっているんですけど、作戦面のことを書いてます」

編集部おすすめ