来季、14年ぶりの日本一を目指す巨人は29日、東京・稲城市のGタウンとG球場室内練習場で秋季キャンプをスタートさせた。円陣では阿部慎之助監督(46)が「こんな時に集合している場合じゃない」と日本シリーズ期間の再始動に悔しさと、来季への決意を示した。

リーグ3位からの逆襲、V奪回へテーマは「鍛錬の秋」。課題の守備力強化へ初日からシートノックを行い、実戦的な打撃や打ち込みなども含め約8時間の猛練習を行った。

 阪神とソフトバンクの激闘の裏で巨人の来季に向けた戦いが始まった。阿部監督は1~3軍まで全軍集合した練習前の円陣で訓示。「まだ日本シリーズもやっている。来年はこんな時に集合している場合じゃない。日本シリーズに出て秋の練習はしない、そういう方向でみんなスタートを切ってほしい」と熱く呼びかけた。秋晴れのGタウン。逆襲への思いを全員で共有して猛特訓が始まった。

 CSで敗退した12日以来の全体練習。投手、野手ともに山積みの課題を解消するため「長くなっちゃう」と「地獄の秋」を事前に予告していた。だが、ふたを開けてみると、ただやみくもに量をこなすだけではない、中身も伴った“濃密な地獄”だった。

 今季リーグワースト78失策だった野手陣にはいきなりシートノックを実施。これまでは初日は試運転的な軽めのポジション別ノックで終わることもあったが、違った。「連係のミスがすごく多くて、必ずメニューの中に入れましょうと。内外野の連係ミスで負けたりとかもしてきたので」。反省を生かしてオコエ、若林、浅野、中山、佐々木らが外野の各位置につき、中継プレーなどを入念に確認した。送球が少しでもそれると味方を鼓舞する声が飛び、良い意味で緊張感があった。

 今季ミスが目立ったバントの練習では試合のように泉、菊地ら実際の投手がマウンドから投球。一人ずつ順番に打席を回した。内野手は守備につき、投内連係の確認にもなる一石二鳥。フリー打撃も1か所で打撃投手の球を打ち、打たない選手は試合と同じように守備、走塁を行った。常に実戦を想定していた。

 本塁付近から並んで行ったロングティー打撃では、フルスイングで遠くに飛ばす、低いライナー、低めの球を拾うの3パターンで打ち分けながら一人計200球ずつ、集中して振り込んだ。

「(状況によって)打ち方変えるってことが大事なので」。振る力と対応力を上げるための工夫。無数の白球が外野に転がった。

 これでようやく午前が終了。午後からは車で約5分のG球場に移動して量重視のメニューに臨んだ。まずは1時間以上の守備。内野手は徹底的にノック、外野手は室内でブルペン入りするなど送球練習を繰り返した。その後、室内で1時間以上のフリー打撃。阿部監督も打撃投手を務めてリチャードらに熱投し続けた。練習の合間に選手が栄養補給できるようパンやおにぎりの補食も用意された。

 「とにかく量をこなすこと。今年の反省も踏まえて全てのことをやり残さないというのがテーマ」。

投手陣も走り込みなどで追い込み、午前9時に始まった全体練習は午後5時に終了。外は日が暮れて真っ暗だった。質量ともに充実した約8時間の猛練習。来季V奪回への土台作りへ濃厚な再始動になった。(片岡 優帆)

 【訓示要旨】 まだ日本シリーズもやっている。来年はこんな時に集合している場合じゃないと思う。日本シリーズに出て秋の練習はしない、そういう方向でみんなスタートを切ってほしいなと思います。今年の反省を生かした練習を秋、春もやると思うので、体の準備と心の準備をしっかりして、13日まで実りある秋のキャンプにしたいと思いますので、皆さんよろしくお願いします。

 〇…秋季キャンプは若手を午前組と午後組の2班に分けて11月13日まで行う。午前組は午前がGタウン、午後がG球場室内とサブグラウンド。午後組は午前がG球場室内とサブグラウンド、午後がGタウンで同じメニューを行う。車で約5分、徒歩約15分の距離にファーム施設が2拠点ある地の利を生かし、朝から夕方まで効率良く野球漬けになる。

 ◆巨人近年の秋の初日

 ▽23年 阿部新監督が本格始動し、宮崎キャンプ初日は6時間の練習で若手主体の26人が参加。1時間の昼食休憩後に野手は2時間ほぼ打ちっ放し。個別練習前に15分間の軽食タイムも設けた。吉川には約30分熱血指導。フリー打撃では自ら実演で本塁打を放ち「くたくたになるまでやってください」と訓示。

 ▽24年 宮崎キャンプは実施せずG球場で秋季練習。1~3軍まで全員集合で“考える秋”を掲げた。阿部監督は円陣で「のんびりしてるとすぐクビになる世界」と訓示。3軍選手にも強振指令を出すなど指導し、若手は1軍とファームで午前、午後に分かれて練習した。

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