◆SMBC日本シリーズ2025第5戦 阪神2―3ソフトバンク=延長11回=(30日・甲子園

 ソフトバンク・柳田の底力を感じた8回の同点弾だった。石井の直球は指のかかりもコースも決して悪くなかったが、スタンドまで持っていかれた。

普段、対戦しているセ・リーグの打者なら、球威に押され、左飛かファウルになっているようなボール。続く柳町の右翼フェンス直撃の三塁打、延長11回の野村の決勝弾を見ても、パ・リーグ、ホークスの打者のスイングの強さは明らかだ。

 阪神ペースで試合が進んでいたように見えたが、小久保監督の積極果敢な采配が、流れを引き寄せていった。7回のチャンスでは、実績十分の近藤とはいえ、首位打者の牧原大への代打。ここは無得点に終わったものの、阪神からすれば、ボディーブローが効いて、追い詰められていった。同点の9回の守りでは、ビジターにもかかわらず守護神・杉山を投入。5戦目で決めるという覚悟をにじませるタクトだった。

 阪神は8回の大山のダイビングキャッチに象徴されるように、5試合を通じてよく守り抜いた。藤川監督も延長から村上を投入し、才木もブルペンに待機させるなど、後がない状況で打つべき手は打ったと言える。結果論になってしまうが、少ないチャンスを生かして、接戦をものにしていく野球が、この短期決戦では通用しなかった。ソフトバンクの5本塁打に対して、阪神は0本塁打。27年シーズンからはDHも導入されるし、セ・リーグが野球そのものを見直していくしかない。

(スポーツ報知評論家・安藤 統男)

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