◆米大リーグ ワールドシリーズ第7戦 ブルージェイズ4―5ドジャース=延長11回=(1日、カナダ・オンタリオ州トロント=ロジャーズセンター)

 ドジャースが1日(日本時間2日)、ワールドシリーズ(WS)第7戦の敵地・ブルージェイズ戦を延長11回の末に制して4勝3敗とし、21世紀初、球団初の連覇で9度目の頂点に立った。第6戦先発の山本由伸投手(27)は連投で9回途中から2回2/3を無失点。

WS3勝を挙げ、日本人では2009年松井秀喜(ヤンキース)以来の最優秀選手(MVP)に輝いた。

 山本が神になった。1点リードの延長11回1死一、三塁。カークをスプリットで遊ゴロ併殺に仕留め、球団史上初のWS連覇をつかんだ。力を使い果たし、天を見上げて絶叫。スミスに抱え上げられ、歓喜の輪の中でもみくちゃにされた。「もう無心で、野球少年に戻ったような、そんな気持ちでした」。歴史に残る魂の34球で日本人では松井秀喜以来、投手としては初めてMVPに輝いた。

 「昨日投げ終わって、夜に治療して、一応備えてはいましたけど、今日練習して、休んでたら、行くかもみたいになって、気付いたら試合が始まって、ブルペンにいて、負けてたけど途中で追いついて、気付いたらマウンドにいました」

 96球を投げて6回1失点で勝利した前日の第6戦先発から、異例の連投となった。4―4の9回1死一、二塁で登板。1死満塁となったが、バーショを二ゴロ、続くクレメントを中飛で切り抜けた。2回2/3を1安打無失点で連日の白星。

WSでの3勝は01年R・ジョンソン(Dバックス)以来、球団初の偉業を成し遂げた。そもそも第6、7戦で連投したこと自体が史上4人目で、敵地では史上初のことだった。

 第6戦後、「明日プレーする人は大変だと思います」「できれば応援を頑張りたい」と冗談交じりに話していた。実際、個人トレーナーを務める矢田修氏には「1年間ありがとうございました」と伝えていた。だが、返ってきた言葉は「ブルペンで投球できるくらいには持っていこうか」。由伸は「いるだけで力になるなら」と気持ちを入れ替え、この日の午前5時に「頑張ります」と矢田氏に救援スタンバイの覚悟を決めたLINEを送った。試合前には風呂で体を温め、5回表終了後にブルペンへ。準備を整え、その時を待った。

 延長18回の死闘となった第3戦は結局登板はなかったものの、19回に向けて完投した第2戦から中1日で肩をつくり、相手に重圧をかけた。その男気がサヨナラ勝ちを呼び、実質“4勝”ともいえる獅子奮迅の活躍。「限界を超えたという感覚はないですけど、プロに入って2日連続で登板するという経験は初めて。また一つ、いけるんだと自信になりました」とほほ笑んだ。

 13年上原浩治(Rソックス)以来、日本人2人目の胴上げ投手。「最後、何を投げたのかも思い出せないような、そういった興奮がありました。涙が出ましたね。すごく久しぶりにあふれてきました」。1年で5勝を積み上げ、日本人最多をさらに更新するPS通算7勝。新エースがド軍を救った。

 ◆山本由伸に聞く

 ―WS連覇。

 「できることは全部できましたし、このチームで優勝できてうれしく思う。やりきったなっていう達成感、喜びを感じますし、本当に全員が出し切った。他の選手もコンディションギリギリで、もうできることを全部やってプレーした。気持ちが一つになった結果」

 ―体調はどうだった。

 「ブルペンでつくり始めた時は、まだ投げられる確信がなくて。

第7戦で絶対落とせなかったので責任もありますし、迷いがあったけど、温まっていくうちにほぐれて、行けるぞっていうところまで持っていけたので、『行ける』と言いました」

 ―どれくらい疲れたか。

 「肩肘がっていうより、本当に体がドッと。もうやり切ったなっていう、そんな感じです」

 ―個人トレーナーの矢田氏からは何と言われた。

 「ブルペンで投げられる姿を見せるだけでも勝負は何か空気が変わったり、そういうのもあるし…みたいな感じでどんどん乗せられました」

 ―前日、明日プレーする選手は大変だと言っていた。

 「大変(笑)。でも、やり切ったから今まで感じたことのないような喜びも感じてますし、やって良かったなと思える。また一つ成長につながった。成長というかそんなもんじゃないけど、すごい一日になりましたし、また一つレベルが上がったような、そんな感じがします」

 ―今、何がしたいか。

 「帰りたいです(笑)」

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