大相撲 ▽九州場所4日目(12日、福岡国際センター)

 東前頭12枚目・藤ノ川が平幕で唯一、全勝を守った。東同11枚目・獅司を寄り切った。

八角理事長(元横綱・北勝海)も相撲の取り口と人柄を絶賛する20歳が、自己最長の初日からの連勝を4に伸ばした。横綱・大の里は東前頭2枚目・霧島をはたき込み、新関脇・安青錦も小結・隆の勝を押し出して4連勝。全勝は大の里、安青錦、藤ノ川の3人となった。

 スピードが藤ノ川の真骨頂だ。177センチの藤ノ川と193センチの獅司。体格差がありながら、右のかいな(腕)を返しただけで、獅司がバランスを崩したのは立ち合いからのスピードと勢いがあったからだ。

 印象的だったのは初日の狼雅との一番。立ち合いからもろ差しで一気に走った。この剛速球の相撲があったから、立ち合いの変化などのスローボールも生きる。稽古の様子を見たことがあるが、本場所さながらの気迫も見せていた。小兵は前まわしを取って拝みながら前に出るケースが多いが、藤ノ川はスピードが命。先々代の藤ノ川さんを彷彿(ほうふつ)させるのも古いファンにはありがたい。

 大相撲にとって藤ノ川の存在は大きなアクセントになっている。お客さんの歓声がその存在を物語っている。小兵ながら相撲が大きいだけにケガをしないことを祈るだけだ。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)

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