◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 何事も「基本が大事」とよく言われる。野球ならそれはキャッチボールだろうか。

球を捕って、相手に投げる。多くの人がきっと一度はやったことがある単純な動作だが、とても重要だ。どんなにゴロをうまく捕っても投げなければいけないし、送球がそれたらアウトにならない。投手にとってもピッチングは、捕手のミットをめがけたキャッチボールとも言える。今季19年目のベテラン右腕、楽天の岸孝之投手は「リズム、バランス、タイミング、(球の)ライン。そこは変わらないです」と、投球時と同じ意識で取り組んでいると話す。

 基本だからこそ分かることもある。楽天の久保裕也1軍投手コーチは練習時、キャッチャーミットを持っていることが多く、投手とキャッチボールをする場面もよく見かける。「暇なので。(選手が)いいですかって言ってくるから、やろうかって。それだけですよ」ととぼけるが、実際に球を受けた感覚を助言につなげているという。

 「球の強さだったり回転の軸だったり、変化球だったらどこらへんで曲がり始めるとか。

思ったことを言っているだけで必ずしも正解と思っていないし、選手がやりやすい環境や方法を提供してあげられるのがベスト」。見るだけではなく、肌で感じたことを伝えて成長を促す。選手の希望にすぐ応えられるように、いつもミットを用意していたのだ。

 一見簡単そうに見えるキャッチボールがこんなにも奥が深い。何事も基本が大事。プロの取り組みを身近で見て、改めて実感した。(楽天担当・有吉 広紀)

 ◆有吉 広紀(ありよし・ひろき)東北支局勤務を経て、今年から初めてプロ野球を担当。仙台駐在。

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