◆第56回明治神宮野球大会▽高校の部準々決勝 山梨学院 5―6× 九州国際大付(16日・神宮)

 高校の部では九州国際大付(九州)がV候補・山梨学院(関東)に9回逆転サヨナラ勝ちで4強に進出した。来秋ドラフト候補の強打者・牟礼(むれ)翔外野手(2年)が「1番・中堅」で先発し、全国デビュー。

7回先頭で高校通算24号のバックスクリーン弾を放ち、スカウト陣の度肝を抜いた。

 着弾点は両手の感触が教えてくれた。3―2の7回先頭。牟礼は外角のスライダーを捉えた。打球は神宮の秋空にアーチを架け、バックスクリーンへ到達した。全国デビュー戦を白星で飾り、準決勝進出。17歳は笑顔で高校通算24号を振り返った。

 「普段からバックスクリーンに打つことを意識して、体が開かないように練習しています。初めての全国なので、楽しむことを一番にやってきました」

 9回1死からは来秋ドラフト1位候補の剛腕・菰田陽生(2年)と初対決。直球を振り抜き、左前安打を放った。5打数2安打1打点で逆転勝ちに貢献し「いい投手なので打てて良かった。楽しかった」と汗をぬぐった。

 出身は岡山市。「絶対に県外に出たい。強い学校に行きたい」と中学指導者と縁があった九州国際大付に進学した。寮では毎朝、ご飯2合に生卵4個をぶっ込み、のりをまぶして食べまくり、パワー強化。カブス鈴木誠也の動画をスロー再生で研究し「間の取り方をマネしています」と技術面も向上中だ。岡山県出身で九州の高校に進学といえば、都城(宮崎)で鍛錬したドジャース・山本由伸と同ルート。「ワールドシリーズのMVPに、自分も続きたい」と闘志をたぎらせた。

 進路には「プロ1本で考えています」と明言。「1位で6球団ぐらい(指名が)来たらと思います」と夢を描いた。同世代では菰田に横浜・織田翔希、沖縄尚学・末吉良丞、聖隷クリストファー・高部陸が“四天王”として注目されるが、「バッティングだったら誰にも負けないという気持ちでやっています」と宣戦布告した。

 同校は初出場した21年に続く4強進出。楠城祐介監督(41)にとっては前回出場時に指揮を執った父・徹氏(74)に続く父子白星となった。

「高校通算40本は打ちたい。高卒でプロに行ってメジャーに行けたら」と牟礼。豪快な一発も伝説の序章にすぎない。(加藤 弘士)

 牟礼 翔(むれ・しょう)

 ☆生まれとサイズ 2008年7月14日、岡山市生まれ。17歳。180センチ、85キロ。右投右打

☆球歴 小1からソフトボールを始め、吉備中ではヤンキース岡山ヤングに所属。九州国際大付では1年春からベンチ入り

☆ソフトを始めた理由 母・広美さんから7歳の誕生日に「誕生日プレゼントで、いいところに連れて行くよ」と言われ、行った先がソフトの体験会。「楽しかったので入りました」。ソフト経験のメリットは「真っすぐしかないので、(投手との距離が)近くて速いので、速い球は打てるかなと思います」

☆身体能力抜群 50メートル6秒0。遠投105メートル。小5時は100メートル走で全国大会出場権を得たが「ソフトボールをやっていたので、そっちを優先しました」。

中学は陸上部に所属。1年時に100メートルで12秒55を計測

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