◆第56回明治神宮野球大会第5日▽大学の部・準決勝 青山学院大8―2八戸学院大(18日・神宮)

 あきらめたら終わりだ。6点ビハインドの5回。

八戸学院大・阿部流音(りゅうと・3年)は仲間を信じてマウンドに向かった。「1イニングずつゼロで抑えたら、絶対逆転してくれると思っていました」。味方打線の奮起を願って右腕を振った。

 八戸学院大が所属する北東北野球連盟の会場は地方球場がほとんど。「整備されたグラウンドでやることがあまりないので、いいマウンドで投げられてよかったです」。3者連続空振り三振でスタートすると、内外角に速球を投げ分けスライダー、フォークボールといった変化球を操って大学日本一の青学打線をほんろう。8回2死。DeNAドラフト1位指名の小田をフォークボールで空振りの三振に仕留めると、自然とガッツポーズが飛び出した。9回までの5イニングで許した安打は単打2本。7三振を奪って無失点に抑えた。「青学大打線をゼロで抑えられたのは将来につながってくると思います」。大舞台で自信を深めた。

 秋田・本荘高では投手も3年夏は背番号8。3回戦で敗退した無名の存在だった。「一番最初に声をかけてくださったのが八戸学院大学さん。見つけてくれてありがとうという意味も込めて、ここで頑張って4年後絶対にプロに行こうと思いました」。日本海側の本荘から太平洋側の八戸へ。どちらも冬の寒さには厳しいものがあるが、違った寒さがあるという。「八戸は結構雪が積もって、雪かきをしないと寮から室内練習場までたどり着けないこともあります」。そんな厳しい環境で着実に伸びた。

 177センチ、74キロと細身ながら速球の最速は150に到達した。新沼舘貴志監督は「キレのあるボールはストレートでも変化球でもしっかりと低めに投げられる。上背はないのですが、横の角度がしっかり出せる。ようやくここまで来たなという感じです」と成長を認める。

 決勝進出は逃したが、視線は来年へ。「自分のスキルを磨いていくような練習に取り組んでいきたい。コントロールが武器だと思うので、球速にはそんなにこだわらないでいこうと思います。アベレージ140中盤投げられる技巧派の投手になれれば。来春、戻ってきます」と来年の大学選手権出場を誓った。その先に目標のプロ入りが映っている。「春、秋と結果を出して、来年のドラフトに臨めれば」。夢の実現へ。厳しい冬を耐え抜いていく。(秋本 正己)

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