今年50回を迎える報知映画賞。受賞のインタビューや表彰式では、スターたちがスクリーンとは異なるさまざまな表情を見せてきた。

映画賞を取材してきた歴代担当記者が、印象に残ったシーンを振り返る。

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 ◆大島優子「紙の月」 第39回(2014年)助演女優賞

 2010年代に人気絶頂を迎えた国民的アイドルグループ「AKB48」の絶対的エースだった大島優子(37)が、演技派女優として輝きを見せたのが、「紙の月」(吉田大八監督)だった。銀行員役で決して出演シーンは多くなかったが、主演女優賞を受賞した宮沢りえ(52)演じる同僚に更衣室で「(横領を)やっちゃいそうなんですよ」と語るシーンは強烈な印象を残した。

 この年の6月にグループを卒業。女優に転身して、わずか半年での栄冠だった。表彰式にはAKB48の総合プロデューサーで「育ての親」の秋元康氏(67)がサプライズで登場。壇上で「おめでとう。よく頑張ったね」と祝福され、涙が込み上げた。2人は前日にも顔を合わせていたが、見事にサプライズ成功。大島は驚きと喜びが入り交じった表情で「恩返しができて、うれしい」と涙を拭った。

 写真撮影のタイミングにも印象深い出来事があった。「永遠の0」(山崎貴監督)で主演男優賞を受賞した岡田准一(44)から「出身が出身だけに、お互いおめでとうだね」と祝福されたのだ。

岡田もアイドルグループ「V6」で活動しながら、俳優業に取り組む中で「アイドルという肩書があることで俳優として正当に評価されない」と葛藤を抱えていた。その思いを共有して受賞の喜びを分かち合った。

 大島は「女優の仕事は生きざまがにじみ出る。人生の全てを懸けて芝居に打ち込みたい」とも語っていた。その後、19年度後期のNHK連続テレビ小説「スカーレット」で共演した林遣都(34)と21年に結婚。2児の母となり、仕事と育児を両立させている。今後は人生経験を重ねたからこそ表現できる、味のある演技に期待したい。(有野 博幸)=終わり=

 〇…大島のように、歌手として人気を博しながら報知映画賞を受賞したケースは、最近では第48回新人賞のアイナ・ジ・エンド、第46回新人賞のFukase(SEKAI NO OWARI)が記憶に新しい。三代目J SOUL BROTHERSの登坂広臣岩田剛典はともに新人賞を獲得。電気グルーヴのピエール瀧は38回助演男優賞を受賞。歌手として絶頂期だった沢田研二が第4回の主演男優賞に輝いている。

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