歌舞伎俳優の中村壱太郎が18日、東京・新宿の朝日カルチャーセンター新宿教室で行われたトークイベントで、所作指導を担当した映画「国宝」(李相日監督)について語った。

 壱太郎は日本舞踊家の吾妻徳陽として、女形の歌舞伎俳優役を演じた吉沢亮、横浜流星らに所作指導を行った。

撮影現場の様子について「吉沢さん、流星さんの貪欲さと強い覚悟を感じた。教えることで、自分の芝居の見直しにもなった」。劇中の「曽根崎心中」でお初を演じる際、お歯黒をしていないことについて「最初は違和感があったけど、父(中村鴈治郎)が判断したこと。今となってはそれで良かったと思う」と語った。

 「曽根崎心中」は壱太郎の祖父で人間国宝の坂田藤十郎さん(2020年死去)が当たり役にしていた。壱太郎は「祖父に『国宝』を見てほしかった。見たら、何と言うのか、気になりますね。映画によって『曽根崎心中』が広がって喜んでいると思う」。来年3月には尾上右近との共演で京都・南座の「花形歌舞伎 特別公演」で「曽根崎心中物語」に出演する。

 同世代の尾上右近とは共演機会が多く、「一緒に闘って、同じ景色を見てきた」という盟友だ。さらに女形として意識する存在として中村時蔵の名前を挙げ、上方歌舞伎では「上村吉太朗くんが上方の女形を背負っていくのかな。僕も一緒に歩いていけたら」と信頼を明かした。

 6月6日に公開された「国宝」は現在、興行収入170億超を記録する大ヒット中。興収173・5億円で実写邦画歴代1位の「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(本広克行監督、織田裕二主演、2003年)を超えるのが目前となっている。

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