米大リーグは先週、MVPをはじめとして2025年の各賞がほとんど発表になった。残るは「ベーブ・ルース賞」。

これは全米野球記者協会ニューヨーク支部が選ぶ、ポストシーズンに活躍した選手に贈られるもの。毎年1月に発表される。

 この賞は、史上最高の選手と言われた1948年に亡くなったベーブ・ルースの、大舞台での活躍に敬意を表し、翌年からワールドシリーズで活躍した選手に贈られるようになった。ワールドシリーズMVPがスタートするのは1955年。こちらがシリーズ終了直後に発表されるのに対し、「ベーブ・ルース賞」は時期を置いての発表となっている。さらに、2007年以降は受賞理由に地区シリーズ、優勝決定シリーズでの活躍なども含まれるようになったこともあり、ワールドシリーズMVPとは異なる選手になることもしばしば起きている。

 1960年のシリーズMVPは、負けたヤンキースのB・リチャードソンだったが、ルース賞は第7戦サヨナラ本塁打を放ったパイレーツのB・マゼロスキーが選ばれた。1975年は勝ったレッズのP・ローズがMVPだったが、ルース賞は完封含む2完投勝ちしたレッドソックスのL・ティアント。2020年もMVPは勝ったドジャースのC・シーガーだったが、ルース賞はポストシーズン新記録の10本塁打を放ったレイズのR・アロザレーナが選出された。

 2009年にヤンキースの松井秀喜がシリーズMVPになった時は、同チームのA・ロドリゲスがルース賞を受賞。A・ロッドがポストシーズン全体で打率3割6分5厘、6本塁打、18打点だったのに対し、松井は打率3割4分9厘、4本塁打、13打点だった。

 ドジャースが4年ぶりに世界一となった2024年は、シリーズMVPとなったのは大活躍のF・フリーマン。

ただ、地区シリーズ、リーグ優勝決定シリーズは打率2割1分8厘、わずか1打点だったこともあり、ルース賞はポストシーズントータル2割9分、4本塁打、12打点のM・ベッツに輝いた。

 そして今年、ワールドシリーズMVPに選ばれたのはドジャース・山本由伸だった。ポストシーズントータルでも6試合2完投勝利含む5勝1敗、防御率1・45と活躍は目覚ましかった。

 ではルース賞はどうなるか?打率2割6分5厘、8本塁打14打点&2勝した大谷翔平との争いになるのは必至だろう。どちらが選ばれても日本人初となる。

 直近で同じような成績を残したケースは、レンジャーズが初の世界一となった2023年。N・イオバルディが6試合5勝0敗、防御率2・95の奮闘も、優勝決定シリーズ5発をはじめトータル3割2分3厘、8本塁打、22打点を残したA・ガルシアが受賞している。

 ルース賞は過去3度2人受賞があっただけに、日本のファンから見れば同時受賞も良いのではなかろうか。(敬称略)

 ※参考資料ベースボール・リファレンス

 蛭間 豊章(ベースボール・アナリスト)

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