◆第56回明治神宮野球大会最終日▽大学の部・決勝 青学大4―0立命大(19日・神宮)

 大学の部では青学大(東都大学)が立命大(関西5連盟第2)を4-0で下し、2年連続2度目の優勝を達成した。連覇は史上6度目。

昨年に続き、決勝で先発した中日のドラフト1位、エース右腕の中西聖輝(4年)が17奪三振で2安打完封勝利をマークし、有終の美を飾った。

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 涙がこみ上げた。ゲームセットの瞬間、熱血漢の安藤寧則監督(48)の頬を、熱い滴が伝った。試合中、力強くナインを鼓舞する指揮官が、戦いを終え、穏やかな表情で言った。

 「本当にこの学年は、個性豊かなのが多いものですから。最後、一枚岩になりきれて終われたということが…。本当にやってきたことをいろいろ、1年生の時から振り返って、それを全部正解にしてくれた。終わり良ければ全て良しという言葉の通りで、良かったな、と思います」

 昨秋の明治神宮大会優勝後、藤原夏暉主将(大阪桐蔭)を中心に新チームが発足した。掲げたキーワードの中に「ごまかさない」があった。その言葉が、指揮官の胸に響いた。

 「やっぱり人間だから、カッコつけたり、ごまかしたり、あるじゃないですか。でも、ごまかさないぞって。

できないならできないで、だったら練習すればいい。失敗をごまかさないで、やろうということです」

 その姿勢を象徴する出来事が、今秋リーグ戦の開幕前にあった。ノックの途中、ナインの間で言い争いが始まった。「バーッと集まって。ケンカが始まって。この空気は俺、行かない方がいいなって」

 後でこっそり、理由を聞いてみた。

 捕球できなかった選手が「太陽のせいで見えないから、捕れない。しょうがねえじゃねえか」と主張した。それに対して「じゃあそれ、神宮でやるのかよ」と憤る選手がいた。両者とも真剣だった。お互いが必死と必死をぶつけ合う、その姿勢がいいなと、安藤監督は思った。

 「彼ら自身が『厳しさ』の基準を高く設けたからこそ、この成果が出たかなと思います」

 6月の全日本大学野球選手権では準決勝で東北福祉大に5-8で敗退。

日本一の夢が破れた。「足りないものがいっぱい見えた」。神宮球場からバスで寮に戻り、全体ミーティングを行った後、藤原を自室に呼んだ。

 「悔しさのあまり、2人で涙が止まらなくて。『もう1回、やるぞ』というところからのスタートだったので。順風満帆にいったわけじゃないんです」

 安藤監督の口癖は「必死、必死の積み重ね」。泥臭く、一生懸命頑張った末に、勝ち取った2連覇の栄冠。涙は、うれし涙に変わっていた。(編集委員・加藤弘士)

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