歌舞伎俳優の尾上左近が21日、都内で記者会見を行い、来年5月の歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」で3代目尾上辰之助を襲名すると発表した。

 祖父の初代尾上辰之助(3代目松緑・追贈)と父の尾上松緑が名乗った名跡を3代目として襲名する。

左近は「この名前は祖父が初めて名乗り、父が命をかけて守り、つないでくれた、私にとって大切な名前です。より精進を重ね、努力を重ねていく所存です」と決意を語った。襲名披露の演目は「寿曽我対面」の曽我五郎、「鬼一法眼三略巻 菊畑」の虎蔵を予定している。

 左近は、重厚な時代物の立役を得意とする家柄を意識して「紀尾井町(2代目松緑)の荒事を汚さぬように、しっかり勤めていきたい」。さらにここ最近、坂東玉三郎から薫陶を受けた女形でも力を発揮していることを踏まえて「自分ならではの辰之助像を見せていけたら」と抱負を語った。立役と女形の両面で力を発揮していく。

 父の松緑は「祖父、曽祖父の足元に一歩でも近付く役者になってもらえれば」と激励。7代目尾上菊五郎は「左近はここ2、3年、メキメキと力をつけてきまして、みんな、劇界の先輩方も勉強熱心だと褒めております。立役だけでなく、女形もやって、新種というか珍種ですよ」と成長ぶりを評価した。

 祖父・初代辰之助は7代目菊五郎、12代目市川團十郎と並ぶ「三之助」。父・松緑は現在の13代目團十郎、8代目菊五郎と並ぶ「平成の三之助」として注目された。左近の3代目辰之助襲名により、8代目市川新之助、6代目尾上菊之助と並ぶ「令和の三之助」が誕生する。

左近は「三之助という存在は、非常に憧れです。僕自身、憧れであり、大好きな先輩方たち。『令和の三之助』としては僕が年を取り過ぎたので、意識はしていません。今後、お芝居でご一緒させてもらうのは楽しみです」と語った。

編集部おすすめ