プロボクシングでWBC世界バンタム級新王者となった井上拓真(29)=大橋=が25日、横浜市の所属ジムで一夜明け会見を行った。那須川天心(27)=帝拳=との王座決定戦を制して世界王座返り咲きを果たした喜びを語り、「盛り上がるカードをやっていきたい」とWBA同級王者・堤聖也(29)=角海老宝石=らとのビッグマッチを切望。

世界スーパーバンタム級4団体統一王者の兄・井上尚弥(32)=大橋=との兄弟同時4団体統一を目指す意向も示した。

 朝にテレビの生出演もあり「一睡もしていない」という拓真は、「世界王座に返り咲いたというより、強敵の天心選手に勝てたことが一番ホッとしている」と頬を緩めた。格闘技54戦全勝だった天心に初黒星をつけ、一躍バンタム級戦線の主役に浮上。「盛り上がるカードをやっていきたい」とビッグマッチを切望した。

 決着をつけなければいけない宿敵がいる。昨年10月、堤に判定負けし、WBA同級王座から陥落した。同じ95年生まれで、高2のインターハイ準決勝では拓真がポイント勝ちしている。堤は12月17日にWBA同級暫定王者ノニト・ドネア(フィリピン)との対戦を控える。「もちろん気になりますよ。ちゃんと(堤に)勝ってもらって、また自分が奪いに行くっていうのが理想的」と王座統一戦でのリベンジを見据えた。

 ビッグネームも標的の一人だ。10月末に同級転向を表明した元4階級制覇王者・井岡一翔(36)=志成=は、すでにWBC5位にランクされる。

「モチベーションもめちゃくちゃ上がると思う。その時が来ればやりたい」と描いた。現状で初防衛戦はランク最上位の同級3位フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)との指名試合となる可能性が高い。「また強い井上拓真を作り上げるだけ」と迎え撃つ覚悟だ。

 大橋秀行会長(60)も「面白い試合がたくさんあると思うので楽しみ」とビッグマッチ実現に意欲。来年5月に東京ドームで尚弥と前WBC&IBF世界同級王者・中谷潤人(M・T)の対戦が計画される中、拓真のV1戦も「一緒になってもいい」と示唆した。

 王座に返り咲いたことで、再び兄に続く日本史上2人目&兄弟同時の4団体統一が目標となった。「そこを目指してまたやっていけたら」と拓真。尚弥は12月27日に防衛戦を控えながらも、天心戦へ向けて拓真をサポート。会見や計量に同行し、試合直前にはミットも持った。「一緒にいると本当に心強い。『チーム井上』は固まってなきゃいけないんだなと感じた」と拓真。

「チーム井上」で、バンタム級完全制圧を目指す。(勝田 成紀)

 〇…拓真が、試合後に控室前で天心と談笑した内容を明かした。互いに「パンチが当たらなかった」などと試合を振り返った後、天心から「最後に一発蹴ってもいいですか?」と冗談を言われ、拓真が「それだけは勘弁して」と返したという。両者は試合前の2度の会見でも、一度も目を合わすことがなかったが、拓真は「試合前はお互いピリついた状態なんで、ああいう感じになるのは当たり前。終わればお互いたたえ合うのがスポーツの良いところだなと感じる」と話した。

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