青学大時代に箱根駅伝5区で活躍し「3代目・山の神」と呼ばれた神野大地氏(32)=M&Aベストパートナーズ(MABP)選手兼監督=、小説家の堂場瞬一氏(62)、スポーツライターの佐藤俊氏(62)が座談会形式でスポーツ報知の取材に応じた。箱根駅伝の魅力や第102回大会(来年1月2、3日)の見どころなどを語った。

優勝予想について、神野氏が母校の青学大、堂場氏は名門の中大、佐藤氏は番狂わせを期待した。(取材・構成=竹内 達朗)

 2015年箱根駅伝5区を驚異的な区間記録で走破し、青学大の初優勝に貢献した神野選手兼監督。箱根駅伝などスポーツ小説や警察小説を多く執筆している堂場氏。徹底した取材で箱根駅伝やサッカーなどの魅力を伝えている佐藤氏。それぞれの立場は異なるが、箱根駅伝への思いは強い。

 神野選手兼監督(以下神)「一日で、いや、1時間で人生を変えることができる。それが箱根駅伝です。僕の場合、青学大3年時に5区を走っている間にSNSのフォロワーが約1000人から約2万5000人に増えました。『箱根駅伝を使いすぎ』と批判されることもありますが、今、僕がM&Aベストパートナーズ(MABP)の監督をして、ニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝、来年1月1日)に初出場できるようになったことも箱根駅伝で結果を残したから、と思います」

 堂場氏(以下堂)「箱根駅伝で活躍した選手は、それを最大限に利用していい、と思いますよ。アスリートは選手寿命が限られているし、それだけの価値がある。駅伝は残酷なスポーツです。タスキが途切れてしまうこともある。

選手が失速すると、泣きそうになります」

 佐藤氏(以下佐)「スポーツの枠を超えて、高校野球の夏の甲子園と共に日本の風物詩になっています。レースもコースも美しい。時には残酷な展開もありますが、それを含めて魅力でしょう」

 駅伝シーズンに合わせて、堂場氏は箱根駅伝にオープン参加する関東学生連合チームを描いた小説「チーム4」(実業之日本社)を出版。佐藤氏は早大OBの渡辺康幸氏(現住友電工監督)、東洋大OBの相沢晃(現旭化成)ら歴代のエースたちを徹底取材した「箱根2区」(徳間書店)を発表した。フィクションとノンフィクションの対照的な表現で箱根駅伝の魅力を伝えている。

 堂「フィクションは何でもできます。全くあり得ないことは書くことはありませんが、あり得ないこととあり得ることのラインぎりぎりを攻めることがフィクションの面白さですね」

 佐「ノンフィクションは元々、選手が持っている迫力が醍醐(だいご)味です。なぜ、このようなことが起きたのか、背景や舞台裏を伝えてきたい」

 神「本を読むことで学ぶことは多いです。MABPでは課題図書を決めて選手、スタッフ全員が同じ本を読み、勉強になった点などを発表する会を開いています」

 3人ともに青学大出身。青学大の特長や魅力をどのように考えているか。

 堂「いい意味で『軽い』。こだわりがないことがいいのではないでしょうか」

 佐「チャラチャラしているように見えて、やる時はやる。

集中力がある学生が多いと思います。オンとオフの切り替えができます」

 神「それは青学大駅伝チームにも共通していると思います」

 今季の学生3大駅伝初戦の出雲駅伝(10月13日)は国学院大が快勝。第2戦の全日本大学駅伝(11月2日)は駒大が圧勝。前回の箱根駅伝は青学大が制した。直近の3大駅伝覇者と、スピードを生かした爆発力がある中大が「4強」として優勝候補に挙がる。また、エース山口智規(4年)、5区の「山の名探偵」工藤慎作(3年)、スーパールーキー鈴木琉胤(るい)を擁する早大を含めて「5強」ともいわれる。

 第102回箱根駅伝の展望は?

 神「箱根駅伝はやはり青学大が強いでしょう。箱根に向けて、一番、練習を積んでいるのでは青学大と思います」

 堂「そろそろ中大が優勝してほしい。ちょうど、1996年以来、30年ぶりの優勝を見たいですね。いつも同じチームが勝つのではなく、毎年、優勝チームが変わる方が箱根駅伝はより盛り上がるし、競技レベルが上がると思います」

 佐「サッカーの世界に例えると、青学大、駒大、中大、早大などはビッグクラブでしょう。そのビッグクラブを引きずり下ろす勢力があってこそスポーツは面白い。今回、4強、あるいは5強と言われていますが、それ以外のチームが勝つアップセット(番狂わせ)を見たいですね。

特に往路ではアップセットが起こる可能性はあるし、期待しています」

 箱根駅伝の将来、未来へ期待することは?

 佐「関東の大学だけではなく、全国の大学が出られるようになってほしいですね。箱根駅伝を目指す選手も、箱根駅伝に注目する人ももっと増えるでしょう」

 堂「5年、10年スパンではそれほど大きな変化はないでしょうけど、50年後の箱根駅伝は想像がつきません。人間は自分が死ぬ頃までしか想像できない。この3人の中で神野君だけは50年後も生きていると思うので、その時の箱根駅伝を見届けてほしい」

 神「このままの箱根駅伝であり続けてほしいですね」

 ◆神野 大地(かみの・だいち)1993年9月13日、愛知県出身。32歳。青学大総合文化政策学部卒業。箱根駅伝は2年2区6位、3年5区区間賞、4年5区2位。3年時は青学大初優勝、4年時は連覇に貢献した。コニカミノルタを経て、プロランナーに転向。現在はM&Aベストパートナーズの選手兼監督。

 ◆堂場 瞬一(どうば・しゅんいち)1963年5月21日、茨城県出身。62歳。

青学大国際政治経済学部卒業。2000年に野球を題材とした「8年」で小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。警察小説とスポーツ小説を軸に多くの作品を執筆。主な著書は「刑事・鳴沢了」シリーズ、「チーム」シリーズなど。

 ◆佐藤 俊(さとう・しゅん)1963年3月5日、北海道出身。62歳。青学大経営学部卒業。出版社を経て、93年からフリーのスポーツライターとして活動。サッカー、陸上を中心に「仕事は断らない」がポリシー。主な著書は「稲本潤一 1979―2002」「宮本恒靖 学ぶ人」「箱根0区を駆ける者たち」など。

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