第102回箱根駅伝(来年1月2、3日)で15年ぶりの総合優勝を目指す早大が13日、埼玉・所沢キャンパスで合同取材を行った。2年連続で山上りの5区を走り、名探偵コナンの主人公に似た姿から「山の名探偵」としても話題になった工藤慎作(3年)がチームの大黒柱。

今季も全日本大学駅伝8区で日本人区間最高タイムを30年ぶりに更新するなど勢いづくエースは来年3月、初のマラソン挑戦も予定だ。箱根路で頂点への謎を解き明かし、名門に歓喜をもたらす。

 早大総合優勝へのカギは工藤が握っている。箱根路で3年連続の山上り5区を希望し、「先頭を走る準備はできている。早稲田のストロングポイントとして力を発揮する」と言い切った。1年時は区間6位、2年時は同2位。今回も眼光鋭く「区間賞、区間記録を狙う」と目標を掲げ、青学大の若林宏樹が持つ区間記録(1時間9分11秒)を視野に入れた。

 実績も十分だ。11月の全日本大学駅伝は8区(19・7キロ)を任され、95年に早大OB渡辺康幸がマークした日本人最高記録を30年ぶりに5秒更新する56分54秒。平地でも強かったが、あくまで山上りにこだわる。その理由は「フルマラソンで活躍したい」と将来を見据えてのことだ。上りに必要な有酸素能力を高め、過酷な区間で自らを磨く。

 既に、今回の箱根後は初マラソン挑戦を明言している。花田勝彦監督(54)は「来年の東京マラソン出場を予定しています。黒田朝日君(青学大)の日本学生記録(2時間6分5秒)を目指してほしい」と期待。工藤も28年ロス五輪を見据え、代表選考会のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC、27年秋開催)参加標準記録(2時間6分30秒)を超える「2時間5分台は出したい」と力を込めた。

 人気漫画「名探偵コナン」の主人公・工藤新一と名前が似ており、メガネをかけた姿から「山の名探偵」と呼ばれる。この愛称もお気に入り。25年の箱根往路はコナンにちなみ、「真実はいつも一つ」の左手を前に突き出す決めポーズでゴール。沿道からの「名探偵!」という声援も力に変えてきた。起伏などコースの詳細は暗記するタイプで、次々と難所の謎を解く。花田監督も「研究熱心。クレバーな走りをします」と舌を巻いた。

 照準を5区に合わせて走り、「箱根から世界へ、という言葉の通りにキャリアを踏んでいきたい。

五輪出場、ワールドマラソンメジャーズでも活躍したい」。新春の箱根路から大きく飛躍する。(手島 莉子)

 ◆工藤 慎作(くどう・しんさく)2004年11月10日、千葉・船橋市生まれ。21歳。八千代松陰高時代の21、22年に5000メートルでインターハイ出場。23年、早大・スポーツ科学部入学。学生3大駅伝は1年時に出雲4区10位、全日本4区13位。箱根5区6位。2年時は出雲6区2位、全日本8区3位、箱根5区2位。今年2月の日本学生ハーフマラソンで日本学生歴代4位の1時間0分6秒で優勝し、7月のワールドユニバーシティゲームズ(ドイツ)金メダル。168センチ、51キロ。

 ◆早大 1914年創部。

正式名称は陸上競技部ではなく「競走部」。20年の第1回箱根駅伝に出場した4校のうちの1校。箱根優勝は歴代2位の13回。出雲優勝2回、全日本は92年の初出場初優勝から4連覇。2010年度は学生駅伝3冠達成。長距離ブロックは選手34人、学生スタッフ6人。練習拠点は埼玉・所沢市。タスキの色はエンジ。主なOBは瀬古利彦、マラソン日本記録保持者の大迫傑(リーニン)ら。

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